レチノ・エー・クリーム0.025%はニキビの治療薬ですが、強力な皮膚のターンオーバー作用を持つため、シミ、シワ取りの薬として使用されることもあります。
皮膚は三層から成っており、そのうち真ん中の層である真皮には、皮膚の脂である皮脂を分泌する脂腺という腺があります。この腺は毛包に付随しており、皮脂は死んだ皮膚細胞と一緒に脂腺から毛包を上がり、毛穴から皮膚表面に出てきますが、体質的な問題や表皮の新陳代謝の低下が原因となって毛穴周囲の角質が厚くなると毛穴が詰まります。さらにそこに乾いた皮脂や角質が溜まり、毛穴から出ることができなくなることで発症するのがニキビ(ざ瘡)です。
ニキビの発症にはホルモンが深く関わっているため思春期にみられることが多く、主に顔を中心に現われますが、背中、胸の上部、肩などにも発症します。感染がひどくなると、内部に膿が溜まる膿瘍に発展することもあり、皮膚中で破裂した場合はさらに症状が悪化しますが、一般的に軽症の場合は、無理につぶしたり、開こうとしない限りは跡形もなく消えます。
このニキビ治療に効果を発揮する薬が、レチノ・エー・クリーム0.025%の有効成分であるトレチノインです。トレチノインには、表皮角化細胞の増殖を促進するとともに、角質を薄くし、はがれやすくする作用があります。この作用によりレチノ・エー・クリーム0.025%は、ニキビの角栓をはがすことで内容物の排出を促すほか、皮脂腺を萎縮させて皮脂の分泌も抑制することからニキビ治療に効果を発揮します。
一般に、レチノ・エー・クリーム0.025%塗布後3週間程度で改善しますが、女性の場合ではホルモンの関係から、月経開始前に症状が悪化することもあります。
トレチノインのこれらの効果は、近年ではニキビ治療薬としてもよりもシワやシミを改善する薬として使用されることのほうが多くなってきているようです。
皮膚は28日周期で、表皮のいちばん深い部分である基底層で表皮細胞が生まれ、古くなった角質がはがれ落ちますが、このサイクルが乱れて基底層に沈着したメラニン色素を外に押し出すことができなくなった状態がシミです。トレチノインは、通常の約2倍の速さで皮膚の再生を促し、表皮細胞を活発に増殖させるために表皮の細胞と同時にメラニン色素も皮膚の表面に押し上げ、古い角質と一緒にはがれ落ちることでシミを目立たなくし、またシワを薄くする効果が期待できるとされています。
この急速な皮膚再生効果のため、レチノ・エー・クリーム0.025%を塗布した後、数日以内にほぼ例外なく皮膚が異常に乾燥し、角質の著しい剥離が始まって角質がボロボロとはがれ落ちてきます。また個人差はありますが、これに伴い肌に異常な赤みやかゆみ、ヒリヒリ感などが生じることが多いようですが、これらの反応は副作用ではなく好転反応です。さらにレチノ・エー・クリーム0.025%による治療中はピーリング剤を使用したのと同じ状態であるため、皮膚そのものや皮膚の保護作用がとても低くなっており、紫外線は可能な限り避け、外出する場合は高SPFのサンスクリーンの使用が必要です。
なお個人の皮膚の状態により適するトレチノインの濃度が異なります。肌に合わない濃度を使用した場合、症状が悪化したり、反対にまったく効果が現われないことがあるため、使用に際しては注意が必要です。