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2012-07-05
ソース(記事原文):メドページ・トゥデイ
脳卒中により損傷した脳をメトホルミンが修復する可能性
メドページ・トゥデイ(2012年7月5日)― メドページ・トゥデイ北アメリカ担当記者マイケル・スミス(Michael Smith)著
ペレルマン・ペンシルベニア大学医学大学院名誉教授ザルマンS.アグスMD(Zalman S. Agus, MD)、およびドロシー・カプト(Dorothy Caputo)MA, BSN, RN,ナースプランナーによるレビュー
糖尿病治療薬として広く使用されているメトホルミンは、神経系の損傷に対しても治療薬となる可能性があると、研究者らが報告した。
トロント小児病院(Hospital for Sick Children)のフリーダ・ミラーPhD(Freda Miller, PhD)と同僚らによれば、一連の培養実験および動物実験において、この薬は新たな神経細胞の増殖を促進した。
古典的な行動試験では、メトホルミン投与マウスは対照物質投与マウスよりも新しい記憶の形成が速かったと、ミラー氏らはセル・ステム・セル(Cell Stem Cell)7月6日号の中で報告している。
その示唆するところとして彼らが結論付けたのは、虚血性脳卒中やアルツハイマー病などの疾患において、メトホルミンやその同種のものは「神経系の治療における薬理学的アプローチの候補」となる可能性がある。
幹細胞を用いて新たな神経細胞を作り出すというのは魅力的な治療法だが、これまでのところ、成長因子や小分子を用いたアプローチは上手くいっていないと彼らは指摘している。
ミラー氏と同僚らは、以前に、胚の神経前駆細胞の最適な発育にはCREB結合タンパク質(CBP)と呼ばれる分子が必要なことを明らかにしている。また、CBPがその仕事を遂行するには、別の分子の異型プロテインキナーゼC(aPKC)による活性化が必要なことも明らかにした。
彼らは肝細胞を用いた際に、aPKC-CBP経路はAMPキナーゼの下流に存在し、メトホルミンがAMPキナーゼを活性化することでこの経路も活性化されることに着目した。
ミラー氏らは、メトホルミンが神経幹細胞のaPKC-CBP経路を活性化し、それにより新たな神経細胞が作り出されるという仮説を立てた。
一連の培養実験では、マウス神経幹細胞およびヒト神経幹細胞のいずれにおいても、実際、メトホルミン投与により神経細胞の新生が促進されることを明らかにした。
マウスを用いた実験の一例では、幹細胞が作り出した新たな神経細胞の数について、メトホルミン群は対照群の2倍近くとなり、有意差が認められた(P<0.05)。
生きているマウスにメトホルミンを12日間投与した場合では、海馬、すなわち新しい記憶を作る能力と密接に関係している領域の新たな神経細胞数は、対照マウスと比較して約30%増加したとミラー氏らは報告している。
この過程には正常な量のCBPが必要であり、CBP遺伝子を1つしか持たないマウスではメトホルミンの効果は認められなかった。
主要な実験では、水迷路の水面下に隠された足場の位置をマウスに学習させて、その後、足場の新しい位置を速やかに学習するよう要求した。
マウスにメトホルミン200mg/kgまたは生理食塩水のいずれかを38日間投与したところ、22日目から38日目に、水迷路の避難場所となる足場の最初の位置を学習した。
その後、水迷路の反対側の四分円に足場を移動して、その位置を再び学習するようマウスに要求した。
いずれの課題においても、マウスは同等の速さで足場の位置を学習した。
ただし、足場を移動させた水迷路にマウスを戻した際、対照マウスは元の四分円で足場を探すのにより多くの時間を費やした一方で、メトホルミン投与マウスのほうが先に新しい四分円領域内を探した(それぞれP=0.05、P=0.04)。
いずれの群も、足場が一度も設置されなかったその他2カ所の四分円では、探すのに費やした時間は同じであった。
その示唆するところとして、マウスが2番目の位置という新しい記憶を形成するのをメトホルミンが助けたと、ミラー氏らは主張した。解析により、マウスの能力の強化と並行して、成体歯状回の新生神経細胞数が増加したことが明らかにされた。
この関連性を裏付けるため、この研究者らは実験を繰り返す一方で、メトホルミン投与マウスに対し、神経前駆細胞のように活発に分裂する細胞を選択的に殺す薬の投与も行った。
この併用投与により、メトホルミンが記憶に及ぼす影響は抑えられ、新たな神経細胞の数も減少したと彼らは報告した。
この研究は、カナダ保健研究機構(Canadian Institutes of Health Research)、マキュアン再生医療センター(McEwen Center for Regenerative Medicine)、カナダ幹細胞ネットワーク(Canadian Stem Cell Network)、およびスリー・トゥ・ビー財団(Three to Be Foundation)の支援を受けた。著者らは、利益相反の有無を報告しなかった。
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