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2011-09-03
ソース(記事原文):ラーガンメール
血圧には薬剤の併用投与がより効果的
ラーガンメール (2011年9月3日) ― 新たに発表された研究から「高血圧の治療には薬剤を併用する方が、単剤よりも優れている」ことが示唆された、とBBCニュースが報じた。
この無作為化対照試験では、最初に血圧降下剤の併用で投与開始すると、いずれかを単剤投与するよりも、血圧の低下が大幅かつ迅速であるほか、さらなる副作用もないことが明らかとなった。アムロジピンとアリスキレンは、異なる方法で血圧低下に作用する。
現時点で医師らが行っているのは、高血圧患者に対し、最初に単剤投与し、その後必要があれば別の薬剤を追加するというものである。本研究の計画を十分吟味した著者らは、臨床診療では高血圧患者に対し単剤よりも2剤併用で治療開始するよう今後変更すべきであることを示唆している。ただし、今回の試験結果は有意であるものの、特定の2剤しか検討しておらず、今回の有効性と、その他のクラス(種類)の降圧薬を単剤または併用で使用した場合との比較はできない。32週間を超える長期的効果と有害事象(脳卒中、心臓発作、早期死亡など)はまだ検討されていない。
血圧もしくはその治療法について不安な人は、一般医を受診するのが望ましい。
今回の研究結果はどこから発表されたのか?
本研究は、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)や、英国高血圧学会(British Hypertension Society)、グラスゴー大学(University of Glasgow)、ノバルティス製薬(Novartis Pharma AG)スイス支社、およびダンディー市に在るナインウェル病院・医科大学(Ninewells Hospital and Medical Schoo)の研究者らによって実施された。また、ノバルティス製薬からの研究助成を受けており、著者らのうち2名は同社に勤務している。本研究はランセット(査読論文医学誌)で発表された。
本試験はBBCニュースによって大部分が正確に報じられたものの、併用治療は副作用がより少なかったという報道は間違いである。副作用により投与中止した人の割合は、併用治療群とアリスキレン+プラセボ群で同じであったが、アムロジピンを投与した人では高かった(18%)。同剤は 「年間5,000件の脳卒中を予防する」可能性があるとするデイリーエクスプレス(英国新聞)の主張は、本研究によって裏付けられたものではなく、今回の研究では様々な治療が血圧測定値に及ぼす影響を検討したものであり、脳卒中などの心血管系転帰に及ぼす影響を検討したものではない。
研究の種類は?
この無作為化対照試験では、最初に血圧降下剤の併用投与を行うと、いずれかを単剤で投与するよりも有効性が高く、副作用が増えないかどうかを検討した。この種の試験デザインは、薬物療法の有効性を評価するのに最良であると考えられている。
高血圧の治療には、数種類の薬剤が用いられている。本試験で検討された2種類の薬は、レニン阻害薬に分類されるアリスキレンと、カルシウム拮抗薬に分類されるアムロジピンである。2剤は異なる方法で血圧に作用する。
現在の診療では、いずれか1剤で治療開始し、その後必要であればもう1つの薬剤を導入するというものである。しかし、著者らは、短期的試験により治療開始時に併用治療を用いた方が、単剤よりも良好になりうることが示唆されているとしている。同著者らはこの事例を検証しようとした。
具体的な試験内容とは?
2008年11月から2009年までに10ヶ国の患者1,254人を登録した。被験者は18歳以上で高血圧を有するものとし、その定義は坐位(安静時)の収縮期血圧が150~180mmHgで、 拡張期血圧が110mmHg未満とした。血圧とは心拍動としての血管中の血液の加速度を測定するものである。
血圧測定は2つの測定値からなり、1つは収縮期(心臓が血液を送り出し、血圧が最大値となるとき)、もう1つは拡張期(心臓が弛緩し、血圧が最低値のとき)である。1回の心拍動で両方が記録される。血圧を解釈する場合、収縮期と拡張期は両方とも心血管系の健康指標であるため、両測定値を合わせて考慮する必要がある。
試験開始よりも2週間以上前には、既存の高血圧治療を中止するよう患者に指示した。治療中だが収縮期血圧が試験登録基準を満たしていない(150~180mmHg以外)患者の場合は、試験薬を開始する4週間以上前に既存治療を中止するよう指示された。
16週間にわたる試験の初期相では、患者を3群のいずれかに無作為に割り付けた。3群の内訳は、アリスキレン150mg/日+プラセボ(偽薬)群、アムロジピン5mg+プラセボ群、アリスキレン+アムロジピン(同量)群であった。投与8週間後、全ての用量を倍加した。プラセボは、患者が自分の群がどちらなのか、1剤または2剤のどちらの投与を受けているのかを分からないようにするため使用した。
16週から32週までは、全患者に対し、アリスキレン300mg+アムロジピン10mgを併用投与した。24週目から、血圧値に応じて、必要があればヒドロクロロチアジドという利尿薬も追加投与し、必要がなければプラセボを投与した。
8週、16週、24週の各時点で、収縮期血圧に対する単剤および2剤併用での治療の有効性が比較された。
試験依頼者(ノバルティス製薬)は、試験のいくつかの側面に関与しており、具体的には詳細な試験計画書の策定や、薬剤の提供、それにデータ収集などである。
基本的な結果は?
主な結果の要約:
・ 試験開始から併用治療を受けた患者では、単剤投与の患者よりも、平均収縮期血圧の減少が6.5mmHg大きかった(95%信頼区間[CI]5.3~7.7)。試験開始から8週目~24週目までの減少の平均は、初回併用群で25.3mmHg、単剤の各群で18.9mmHgであった。
・ 24週目に全患者が併用投与を受けていた際、初回併用投与を受けた患者の血圧の方が依然として低かったものの、初回単剤投与の患者との平均差は1.4mmHgにすぎなかった。これに明確な有意性はなかった(95% CI ?0.05~2.9、p=0.059[p<0.05で有意])。試験開始から24週目までの収縮期血圧の減少の平均は、併用群で27.4mmHg、初回に単剤投与した各群で25.9mmHgであった。
・ 副作用により試験から離脱したのは、併用群の85人(14%)と、アリスキレン群の45人(14%)、それにアムロジピン群の58人(18%)であった。主な副作用は、下肢の膨張と、低血圧症状であった。
・ 24週間後、血圧治療に利尿薬の追加を必要とした割合に差はなかった(初回併用群で27%、初回単剤群で26%)。
同研究者らは今回の結果をどう解釈するのか?
高血圧に対する治療は、2剤併用で開始した方が、単剤で開始するよりも有効性が高いため、併用投与が推奨される、と同著者らは結論づけている。
結論
今回の良質な試験には複数の長所があり、具体的には比較的大規模であること、各3群の被験者のほとんどが試験を完遂したことである。高血圧に対し初回から併用治療を行う方が、1剤投与後に別の1剤を投与するよりも、有効性が高く、副作用も同程度であることを同研究者らは明らかにした。初回に単剤投与した患者の血圧は、平均すると2剤で開始した患者ほど改善することはなかった。しかし、全員が併用投与を受けていた試験終了時、群間差は単に1.4mmHgにすぎず、明確な有意差はなかった。下記に留意すべきである。
・ 異なる治療が血圧に及ぼす最終的影響は、24週の時点で評価された。試験がもっと長く続いていれば、今回の結果は違っていた可能性があり、単剤で開始した患者の血圧が、併用投与で開始した患者に匹敵するほど減少していたかもしれない。
・ 本試験では特定の2剤の有効性を検討した。同一クラスの別のタイプの薬剤、もしくは他のクラスの血圧治療薬を使用した場合については不明である。
・ 本研究は、対象が主に白人集団で平均収縮期血圧160超の人に限定された。他の集団においても同じ結果が得られるかどうかは不明である。
・ 半数を超える患者が、高血圧に対する治療を過去に受けていたが、それらの治療を中止していた。今回の試験結果が、過去に血圧治療薬を投与されたことのない患者にも適用されるのかは不明である。
・ 最後に、本試験は心疾患、脳卒中、早期死亡に対する様々な治療薬の組み合わせの影響などの転帰については検討されていない。より長期にわたる大規模な試験がこうした検討に必要となる。
今回の結果は安定したものであるように思われる。一般に治療指針の見直しには、現行のものよりも優れた治療法であるという有力な証拠が必要となる。したがって、これらの結果は、試験対象者に対する別の証拠を加味して検討される可能性が高い。今後の研究では、高血圧と診断された患者に対し、自動的に併用治療を行うべきかを示す十分な証拠を集めることが必要である。
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