プリモルト・エヌ5mgは、黄体ホルモンのプロゲステロンと似た働きをする合成ホルモンのノルエチステロンを含み、黄体ホルモンの不足やホルモンバランスのくずれで起こる月経期間の調整をはじめ、機能不全性出血、月経前症候群、子宮内膜症、月経過多などの治療に使用される薬です。
黄体ホルモンは、成人女性では卵巣の黄体から、また妊娠中では中期以降に胎盤からも分泌される女性ホルモンで、子宮内膜の状態を柔らかく厚くし、受精卵が着床しやすい状態にするほか、月経周期を決めるなど、妊娠の準備と妊娠状態の維持に欠かせないホルモンのひとつです。
黄体ホルモンであるプロゲステロンは、血中から細胞に入ると細胞内に存在するプロゲステロン受容体たんぱく質と結合して複合体を形成しますが、この複合体は核内のDNAの特定の部分に結合することで、多くの遺伝子の発現を変化させます。この機構により、子宮内膜や子宮筋の働きの調整や乳腺の発達、体温上昇などに関るほか、血糖値を正常にすることによる体脂肪の減少、利尿作用、卵胞ホルモン過多の補正、新しい骨組織の生成の促進、骨粗しょう症の防止と回復、副腎皮質ホルモンの前駆体を提供、皮膚病を治すなど、さまざまな役割を持っています。
しかし中枢神経や卵巣機能の異常、精神的なストレスなどが原因となってこの黄体ホルモンの分泌が少なくなると、子宮内膜が厚くならないために着床しにくくなり、また高温期が短く、高低の温度差がなかったりするために卵が成熟せず、排卵障害を起こしやすくなります。この黄体ホルモンの分泌が少ない状態を黄体機能不全と言い、隠れた不妊症の原因ともなっています。
この黄体ホルモンの不足を補う薬が、プリモルト・エヌ5mgです。有効成分のノルエチステロンは、1951年に開発された世界初のプロゲスチン(プロゲステロン合成製剤)で、第1世代のプロゲスチンに属します。主作用のプロゲスチン活性は新しい世代と比較して劣るため、月経困難症や子宮内膜症に対する治療薬としては不利であると言えます。しかしその反面で、ニキビや男性化症状といった副作用の要因となるアンドロゲン活性が低いだけでなく、長年にわたって使用され続けているために、今後新たな副作用が発現する可能性が限りなく低いという利点があります。