ピマフコート・クリームは異なる作用を発揮する3種類の成分を配合し、皮膚のかゆみ、細菌やカンジダ(真菌)による皮膚のトラブルを治療するクリームタイプの治療薬です。
皮膚は表皮、真皮、そして皮下組織の三層で構成されていますが、そのうち細菌やウイルスなど外部の異物が体内への侵入するのを防ぐバリア的働きをするのが、肌の外側にある表皮と、この表皮を構成する4つの層の外側にある角質層です。さらに表皮は弱酸性の皮脂膜による殺菌作用で細菌や真菌の繁殖を抑制します。 しかしこの角質層は、過度の摩擦や加齢、紫外線、空気の乾燥、刺激物の接触などの軽い物理的刺激によって簡単に傷つき、外部の有害物質や刺激物が皮膚の内部に入り込むことで、かゆみ、水疱、発赤、はれ、かさつきといった湿疹や、皮膚炎の症状が起こります。
このような湿疹や皮膚炎の症状の改善に有効なのが外用ステロイド薬です。 ステロイド薬は、副腎皮質から生成分泌され、生命維持に欠かせない役割を果たしている副腎皮質ホルモンを人工的に合成した薬剤で、強い抗炎症作用と免疫抑制作用を有しています。
免疫システムは、さまざまな刺激に対する防御反応として人間の体を守る働きをしますが、反対に過剰に活動すると炎症を引き起こすおそれがあります。この免疫システムの核を担うのが白血球で、刺激を受けた細胞が白血球を呼び集めるためにさまざまな化学伝達物質を放出する結果、これらの物質が組織に働きかけ、症状となって現れます。例えば、毛細血管が拡張すると皮膚が赤くなり、血管透過性が増大すると毛細血管から血漿成分が漏れ出し、はれが起こります。 さらに炎症部位に集まった白血球が化学伝達物質を放出するように命令すると、湿疹の症状が悪化します。
外用ステロイド薬はこの炎症促進物質の産生を抑えることによって血管透過性の亢進を抑制し、また白血球の炎症部への移行、そして活性化という免疫機能をも抑制することから、強い抗炎症作用をもたらします。
通常、湿疹や皮膚炎は、外用ステロイド薬の短期使用によって改善しますが、実際はほとんどの場合でかゆみを伴うため、意識的あるいは無意識に患部をかき壊してしまい、皮膚のバリア機能が破壊されることで炎症症状が悪化してしまうケースがほとんどです。 さらに皮膚のかき壊された部分から細菌や真菌が侵入して増殖することで、炎症がさらに悪化することも多いとされています。
細菌は核膜を持たず、細胞内に核(DNA、RNA)が浮かんだ状態で存在している単細胞の原核生物で、自己分裂によって増殖していきます。それに対し、真菌は核が核膜に囲まれ、基本的に胞子の発芽によって増殖していく単細胞、あるいは多細胞生物であり、その構造や生体が異なることから、細菌の排除には抗生物質や抗菌剤が、そして真菌には抗真菌薬が使用されます。
ピマフコート・クリームは、副腎皮質ホルモンのヒドロコルチゾン、抗真菌薬のナタマイシンそして抗生物質のネオマイシンの3成分を配合し、細菌、真菌など微生物による皮膚感染症を抑えながら、湿疹や皮膚炎の症状を速やかに改善することができる外用薬です。
ナタマイシンは、真菌膜の透過性を変化させて真菌細胞内のイオンなどを外部に漏出させることで抗真菌作用を示しますが、低い用量で働くために安全性が高く、体内にはほとんど吸収されないという特徴があります。またネオマイシンは、細菌細胞のタンパク質生成器官であるリボソームの働きを阻害し、細菌のタンパク質合成機能を損傷することにより、広範囲の細菌に対する殺菌作用を有します。
ピマフコート・クリームには軟膏タイプもるため、使用部位や状況に応じて使い分けることもできます。
クリーム剤は水と油を混ぜ合わせた乳剤性基剤で、べたつきが少なく、肌に浸透しやすいという特長がありますが、粘膜やジュクジュクした傷に使用すると刺激やかぶれが生じることがあるほか、軟膏に比べて微生物が侵入・繁殖しやすいと言われています。一方、軟膏は油脂性基剤の塗り薬です。あらゆる状態の皮膚に使用でき、皮膚の保護性や保湿性にすぐれていますが、使用後のべたつき感やてかりが残る、という欠点があります。