スピラクチン100mgは抗アルドステロン性利尿・降圧剤で、主に以下のような効能・効果があります。
【効能・効果】
高血圧症(本態性)、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、原発性アルドステロン症の診断および症状の改善。高血圧症(腎性など)、悪性腫瘍に伴う浮腫および腹水、栄養失調性浮腫
人間の体の約60%は細胞内液や血漿などの体液で、電解質と非電解質がバランスを保って存在しています。この電解質とは水に溶けて電気を通すミネラルイオンのことで、ナトリウム、カリウム、カルシウム、クロールなどが含まれ、例えばナトリウムは体の水分調節、カリウムは筋肉の収縮やエネルギー代謝、カルシウムは骨や歯の形成、クロールは酵素の供給など、それぞれが生体維持のために必要不可欠な役割を担っています。この中でもナトリウムとカリウムは相互に関連の深いミネラルイオンで、ナトリウムの血圧上昇作用に対して、カリウムには血圧降下作用があり、この2つのミネラルイオンのバランスによって平常な血圧を保っています。
このナトリウムとカリウムのバランス抑制に関与する物質のひとつがアルドステロンという副腎皮質ホルモンです。アルドステロンは体内のナトリウムが不足した時にナトリウムの再吸収を助け、これを確保する働きをします。ところがこの作用により血中に必要以上のナトリウムを取り込んでしまうと、今度はこの過剰なナトリウムを薄めようと身体は血液中の水分を増やそうとします。その結果、血液が血管を圧迫することになり高血圧が起こります。高血圧の人では何らかの原因によりこのアルドステロンが増加していることが知られています。
アルドステロンの影響により体内に溜まった余分な水分と塩分を尿に排出してむくみを取り、血圧を下げることで心臓への負担を減らす薬がスピラクチン100mgです。有効成分のスピロノラクトンはアルドステロンとよく似た構造をした物質で、アルドステロン受容体である鉱質コルチコイド受容体に結合することによってアルドステロンのナトリウムイオンの血中への再吸収作用を妨げる抗アルドステロン薬です。 スピロノラクトンの作用によって再吸収を阻害されたナトリウムイオンと過剰な水分が尿となって排泄されるために、血液の量が減少して血圧が下がります。 利尿作用や降圧作用はさほど強くないものの、体のカリウム分を保持するという特長を持っています。
副腎以外にもアルドステロンは心臓や血管で生成され、また鉱質コルチコイド受容体は心臓、血管壁、脳などにも存在し、活性酸素種の生成を亢進させて血管や臓器の線維化(硬化)を引き起こすことで、心不全や肝硬変などの症状を増悪させるといわれています。しかしスピラクチン100mgはこれらの受容体にも結合して活性酸素種の生成を抑制し、細胞機能低下をもたらす酸化ストレスの軽減作用や血管内細胞機能の改善作用を発揮するため、肝硬変や心不全などの疾患にも効果を発揮すると考えられています。
なおスピロノラクトンはアンドロゲン受容体にも競合的に結合し、アンドロゲン本来の機能を阻害する抗アンドロゲン作用、つまり男性化障害を発揮することが知られています。そのため女性の多毛症やニキビの治療薬として応用使用されているほか、男性の脱毛症の原因と言われているジヒドロテストステロン(DHT)を抑制する作用があることから発毛、増毛剤としても使用されることがあります。