ラシラクトン50は、短時間作用型の利尿成分および長時間作用型のアルドステロン拮抗成分を配合した薬で、通常用量の単剤利尿薬では効果が現われない場合の慢性うっ血性心不全、肝硬変など、主に二次性アルドステロン症によるむくみの治療に使用されます。
アルドステロンは、血液におけるナトリウムとカリウムのバランスを制御してナトリウムの排出を抑え、カリウムの排出を促進するステロイドホルモンで、腎臓の上のあたりにある副腎でつくられます。このアルドステロンが過剰に分泌されると、体内にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧となり、また血液中のカリウムが減るために脱力感や筋力低下のほか、多飲多尿、知覚障害などが起こることがあります。このような疾患をアルドステロン症と呼びます。
アルドステロン症は、副腎の腫瘍(大半は良性)や過形成による過剰なアルドステロンの分泌が原因となる原発性アルドステロン症のほか、腎動脈狭窄および循環血量減少など非下垂体性の副腎外刺激に反応して生じる副腎でのアルドステロン産生増加による二次性アルドステロン症の2種類に分けられます。
二次性アルドステロン症の場合は腎血流低下により起こり、レニン-アンジオテンシン系を刺激するためにアルドステロンの過剰分泌が生じますが、腎血流量が低下する原因として腎動脈閉塞性疾患(アテローム、狭窄など)、腎血管収縮、浮腫性疾患(心不全、腹水を伴う肝硬変、ネフローゼ症候群など)が挙げられます。
原発性アルドステロン症の治療は、原因となる腫瘍を切除する方法が主に行なわれ、二次性アルドステロン症の場合は抗アルドステロン薬など、薬剤を使用した治療が一般的ですが、その中でも利尿を促進して抗アルドステロン作用を発揮する抗アルドステロン性利尿薬と呼ばれているのがスピロノラクトンです。
スピロノラクトンはアルドステロンに構造が類似しており、アルドステロン受容体と結合してアルドステロンの作用を阻害します。その結果、ナトリウムの再吸収が抑制されることでナトリウムの排泄が増加し、利尿効果が現われます(K+の排泄は減少)。
また通常、抗アルドステロン薬は単独でも使用しますが、ループ利尿薬と併用することもあります。
ループ利尿薬は、尿細管のループ状に曲がっている部分(ヘンレ係蹄上行脚髄質部)に作用して水、ナトリウムの再吸収を阻害することで尿量を増して利尿作用を示し、余分な水分、ナトリウム、カリウムを排泄します。また利尿薬の中ではいちばん作用が強いと言われています。
この抗アルドステロン薬であるスピロノラクトンと、ループ利尿薬のフロセミドをひとつに配合した薬がラシラクトン50です。これら2つの成分の利尿作用により、ラシラクトン50は効率的に二次性アルドステロン症によるむくみを解消します。