アルダクトン25はカリウム保持性利尿剤です。遠位尿細管のアルドステロン依存症ナトリウム-カリウム交換部位でナトリウムや水の排泄を促進する一方カリウムの排泄を抑制し、主に高血圧、原発性アルドステロン症(例:副腎腺種、両側の副腎の肥大)や続発性アルドステロン症に関連した心機能障害、肝硬変、ネフローゼ症候群、重度の腹水症等の治療に使用されています。
人間の体の約60%は細胞内液や血漿などの体液です。
体液は水に溶けて電気を通すミネラルイオンである電解質と、そうではない非電解質がバランスを保って存在し、そのうちの電解質にはナトリウム、カリウム、カルシウム、クロール等が含まれています。
ナトリウムは体の水分調節、カリウムは筋肉の収縮やエネルギー代謝、カルシウムは骨や歯の形成、クロールは酵素の供給などの生体維持のために必要不可欠な役割を担っています。
特にナトリウムとカリウムは相互に関連の深いミネラルイオンで、ナトリウムの血圧上昇作用に対して、カリウムには血圧降下作用があるといわれており、この2つのミネラルイオンのバランスによって平常な血圧を保つことができると言われています。
アルドステロンは体内のナトリウムが不足した時にナトリウムの再吸収を助ける副腎皮質ホルモンの一つです。
アルドステロンは末梢尿細管や腎臓の尿を造っているネフロンという管状の構造の集合細尿管の鉱質コルチコイド受容体に働きかけ、細胞膜のカリウムや塩に対する浸透性を高めます。
また細胞内からナトリウムイオンを汲みだしてカリウムイオンを取り込むナトリウム-カリウムポンプという機能を活性化させ、ナトリウムと水の血液中への再吸収とカリウムイオンの尿中排泄の作用を促進します。
ただしナトリウムは水と共に移動する性質があるため、過剰なナトリウムの血液内への再吸収は血液の量を増加させ、結果として高血圧につながってしまいます。
アルダクトン25の有効成分であるスピリノラクトンはアルドステロンとよく似た構造をした物質で、アルドステロン受容体であるミネラルコルチコイド受容体に結合することによってアルドステロンのナトリウムイオンの血中への再吸収作用を妨げます。
スピロノラクトンの作用によって再吸収を阻害されたナトリウムイオンと水は腎臓に溜められ、尿となって排泄されます。
つまり、ナトリウムイオンと共に過剰な水分が尿となって体外へ出るために血液の量が減少し、血圧が下がるという仕組みになっています。
アルドステロンは副腎以外の心臓や血管でも生成され、鉱質コルチコイド受容体は腎臓以外の心臓、血管壁、脳などにも存在しています。
これらのアルドステロンは、NADHオキシターゼという酸化酵素を発現させ活性酸素種の生成を亢進させます。
過剰な活性酸素種によって生体を構成している核酸、たんぱく質、脂質などが酸化させられ、本来の機能を果たすことができなくなるために(酸化ストレス)、血管や臓器の線維化(硬化)を引き起こし、心不全や肝硬変などのが症状が増悪するといわれています。
アルダクトン25は腎臓以外に存在する受容体に結合して活性酸素種の生成を抑制します。
活性酸素種の抑制によって細胞機能低下をもたらす酸化ストレスの軽減作用や、血管内細胞機能の改善作用を発揮し、腎保護作用や、肝硬変、心不全といった疾患にも有効と言われています。
さらにスピロノラクトンはミネラルコルチコイド受容体だけでなく、アンドロゲン受容体にも競合的に結合し、アンドロゲン本来の機能を阻害する抗アンドロゲン作用、つまり男性化障害、を発揮することが知られています。
アンドロゲンとは男性ホルモンの名称で、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デヒドロエピアンドステロン(DHEA)、アンドロステロン、アンドロステンジオンなどがあり、男生殖器の発育、機能や第二次性徴(いわゆる男らしさ)を促進しますが、女性の卵巣や副腎でも生成され、それらの増加は女性の男性型のひげや下肢の濃く太い毛等を特徴とする多毛症やにきびの原因ともなっています。
スピロノラクトンの抗アンドロゲン作用は女性の多毛症やニキビの治療薬としてとして応用使用されています。
また、男性の脱毛症の原因と言われているジヒドロテストステロン(DHT)を抑制する作用があるため発毛、増毛剤としても使用されています。