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2014-04-04

ソース(記事原文):ボルトン・ニュース

「特効薬がなければ、既に命は尽きていた」

ボルトン・ニュース(2014年4月4日) ― ジェレミー・カリー(Jeremy Culley)著

十年前なら、クリス・エバンス(Chris Evans)は、余命わずか数週間というところである。

32歳のエバンスさんは、死の宣告をされたも同然の慢性骨髄性白血病に罹患している。

稀な疾患だが、一旦罹患すると大半の人は、診断後3~5年しか生きられず、医師は通常、残された日々をできる限り快適に過ごすよう勧めていた。

ところが、昨今、ロイヤルボルトン病院(Royal Bolton Hospital)A病棟の片隅にある小病棟で奇跡が起きている。

この致死的な白血病(血液のがん)が、現在、ある錠剤で永続的に抑制できる。

これまで致死的とみなされた疾患が、毎日1錠を服用することで、コントロール可能になる。白血病が消失するというわけではないが、理論上、症状が現れることはない。

この特効薬は、イマチニブと呼ばれるもので、がん標的治療薬として世に出た最初のもので、現在使用されている唯一の標的薬でもある。

本剤が約10年前にNHS(イギリス国家健康保証制度)に採用されて以降、その影響は計り知れない。

同病院の血液科病棟に勤める血液専門医にクレア・バーンス(Clare Barnes)氏がいる。

この病棟には、各種の白血病患者(平均有病期間は約2~3年)の治療に携わっている常勤医師が6人おり、同氏はその一人である。「イマチニブが導入されるまでは、どの患者にも悪い知らせを告げていた。クリスさんほどの病状なら、ドナーがいれば、骨髄移植を行っていた」と同氏は述べている。

「当時の患者に骨髄移植を行う旨を告げなくてはならなかった時のことを思い返すとぞっとする」

「その後、イマチニブが導入されて、素早く寛解が得られるようになり、この錠剤を服用し続ける限りは、白血病の症状が戻ることもない」

ハーウッド(英国グレイターマンチェスター州)在住のエバンスさんは、2011年に慢性骨髄性白血病と診断されたが、翌年には寛解が得られ、骨髄移植の苦しみを体験せずに済んだ。

今度、彼は5月18日のマンチェスター10キロ走を完走することで、白血病・リンパ腫研究のための資金を調達する。病棟スタッフへの感謝の気持ちを伝えるために労力を惜しまなかった。

駐車場会社に勤めるエバンスさんは「NHSに対するマスコミの報道は賛否両論だが、この病棟スタッフの仕事ぶりは見事だった。病気の宣告はショックなことだが、時間と共に受け入れられるようになる」としている。

「一方、錠剤の効き目は素晴らしく、副作用は非常に軽度なものである。未だ4ヵ月ごとに健診や血液検査を受けているが、体調は良好である」

ロイヤルボルトン病院のA病棟にある白血病病棟は、非常に長い通廊の最後にあるので人目につきにくく、献血の看板しか掲げていない。

とはいえ、毎週約120人の患者が治療に訪れており、素晴らしい仕事ぶりには疑いの余地はない。

血液科専門の臨床看護師ルイーズ・メリック(Louise Merrick)氏は「ここは小さな病棟であり、予約なしに来院する患者と健診が仕事の大半を占める」としている。

「検診プログラムの重要性はどれだけ誇張してもし過ぎることはなく、今や検診の精度には驚かされる」

「毎年、平均2~3症例の慢性骨髄性白血病が発見される」

「白血病の有病者数は常に上昇傾向にあるが、これは白血病の症状の管理がうまくいっていることを意味しており、実は望ましい状況と言える」

1990年代後半、スイスのノバルティス社(Novartis)で、イギリスの生化学者ニコラス・リドン(Nicholas Lydon)によって開発されたイマチニブは、分子標的がん治療薬という他に類を見ない特殊な薬剤である。

本剤は、化学療法のように、がん細胞を破壊するのではなく、最初にがんの原因となった遺伝的変化を修復する。つまり、それまで致死的と思われていたがんが、管理しやすい疾患へと移行した。

バーンズ医師は「イマチニブは最初の標的薬であり、見違えるほどの差をもたらした」と補足した。

「標的治療薬は他にも存在するが、イマチニブほど効果的および総合的なものはない」

「本剤の長期的有効性は、まだ新しいため明確でないが、これまでのところ治療は成功している」

「イマチニブに耐性を示す人もいるが、そうした場合は本剤の代わりに第二世代または第三世代の薬剤を投与しなくてはならない」

血液科チームは、慢性リンパ性白血病も治療担当しているが、この診断を受けた高齢者は一般に、疾患進行がゆっくりであるため、別の原因で死亡することが多い。

バーンズ医師とメリック看護師が、より緊張を強いられるのは、急性骨髄性白血病(進行性で通常致死的な血液がん)と急性リンパ性白血病(小児の間で最も多く見られる)と診断された患者である。

バーンズ医師によると、小児の方が成人よりも「回復力がある」ので、「生存確率は高い」としている。

同氏は「他にも有効な薬剤があるかどうか、それらを導入できるかどうかを確認するための検証が常時行われている」と続けた。

「イマチニブにより患者の予後が180度転換したことから、さらなる薬剤の到来を期待しているのは言うまでもない」

「イマチニブの効果は注目に値する」

大半の慢性骨髄性白血病患者は、一般的に60~70歳台で、症状発現は晩年に起きるが、エバンスさんはそれよりも若い。

この病気が見つかるのは、別の目的で血液検査を受けたときが多いが、エバンスさんの場合は、検査で見つかる前に体調不良を来たした。

イマチニブがなかったら、既に亡くなっていた可能性がある。


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