プリリジーは早漏防止の薬です。
早漏の本来の意味は、性交の際にパートナーの女性が性的に満足しないうちに男性が射精してしまうことを指しますが、現在では射精に至るまでの時間が短い状態のことを指すのが一般的になっています。通常の健康な男性における射精までの時間は平均約7.3分であるのに対して、早漏の人では膣内挿入後平均約1.8分で射精、または性交時のピストン運動が数回以内に射精が起こるとの統計があります。しかし早漏と判断するための明確な基準は特になく、また短時間ではあってもパートナーに満足を与えられている場合は早漏とは言わないとされています。ちなみに2008年に開かれた米国泌尿器科学会(AUA)において、早漏の定義を「男性における性機能障害で、性行為時に毎回またはほぼ毎回、女性器への男性器挿入後1分以内に射精または挿入前に射精してしまうこと」と発表しています。
早漏に関する詳しいメカニズムはわかっておらず、かつては陰茎の皮膚過敏が原因というのが一般的でした。しかし最近ではストレスなどによる不安や精神的要因が原因であるという考え方が主流になってきているようです。
男性器の勃起を促すのは副交感神経ですが、射精には交感神経が関わっています。副交感神経は体を緊張から解きほぐし、リラックスさせるように導く神経系統です。一方で交感神経は心臓の拍動を速め、血管を収縮させることで血圧を上げ、体をエネルギッシュにさせる役割をします。人はこの2つの神経をうまく切り替えることでバランスを保っていますが、例えばストレスなどの要因により副交感神経が有意に機能しなくなると勃起する機能が衰え、また交感神経との切り替えがうまくいかなくなることで射精にも影響をおよぼします。このように神経のバランスがくずれ、体を活発にする働きを持つ交感神経が副交感神経よりも優位に機能するために射精の制御ができず、射精のタイミングが異常に早くなることが早漏の原因のひとつではないかと考えられています。
プリリジーの有効成分であるダポキセチンは選択的セロトニン取り込み阻害剤(SSRIs)で、本来はうつ症状の改善に使用される抗うつ剤です。SSRIsで慢性治療している人が射精の遅れを訴えることが多いという点に注目し、早漏予防の薬として開発されました。
うつ状態は、脳内で放出される神経伝達物質であるセロトニンの量が低下することによって引き起こされると考えられています。セロトニンは高ぶった気持ちを抑制して気分を鎮め、また交感神経と副交感神経のバランスを保つ働きをしていますが、不足すると気持ちをさらに落ち込ませ、不安定にさせます。
放出されたセロトニンは、最終的にはその約8割が神経終末から再び取り込まれてしまいます。SSRIsはその再取り込みを阻害することでセロトニンの濃度を高め、その結果として気分が安定し、うつ病の症状を改善する効果があるとされています。早漏に対しても同様に、精神の安定に関わるセロトニンの量が増えることで、性的に敏感になり過ぎている脳にブレーキをかけ、結果として早漏を防止するとされています。
アメリカで12週間にわたって実施された臨床試験の結果によると、プリリジーの有効成分であるダポキセチン30mgを服用したグループでは平均2分47秒、また60mgを服用したグループでは平均3分19秒射精を遅らせることができたとの報告があります。さらに2005年にアメリカ泌尿器科学会で行なわれた臨床試験では、ダポキセチンを服用した男性は、偽薬を服用した男性と比較して射精時間が3-4倍延びたとの結果も出ています。