乾癬(かんせん)は、ケラチノイドという表皮の角質細胞の増殖と、「皮膚の分化」と呼ばれる皮膚のターンオーバー障害を特徴とする炎症性角化症という皮膚病の一種です。
日本での罹患率は人口のおよそ0.1%と言われており、年々増加傾向にありますが、比較的認識度の低い疾患に入ります。
ウイルスや細菌、カビによるものではないため非感染性であり、命にかかわることもありません。
しかし乾癬(かんせん)という名称から伝染病と思われたり、患部が他人の眼に触れることから自己イメージの低下や社会的孤立など日常生活における精神的、社会的ダメージが大きく、生活の質を著しく下げてしまうことが問題となっています。
人間の皮膚となる角質細胞は、表皮のいちばん下にある基定層で角化細胞として生成されます。角化細胞は徐々に上に押し上げられ、いちばん外側の角質層に達するとケラチノサイト(角質細胞)へと容態を変えて一定期間とどまった後、垢となって剥がれ落ちていきます。
このサイクルが皮膚の分化、あるいはターンオーバーと呼ばれる皮膚の入れ替わり周期で、健常な皮膚では約4週間がワンサイクルとなっています。
尋常性乾癬とは赤くなって盛り上がった発疹に白いかさぶたのような垢がこびり付き、ぽろぽろと剥がれ落ちる疾患です。
乾癬の赤く盛り上がった個所では、真皮の毛細血管が肥大して周辺細胞の炎症を引き起こすと同時に、角化細胞が通常の10倍もの速さで生成されるようになります。
尋常を超えた速さで角化細胞が生成されるため、通常4週間ほどであるターンオ―バ期間がわずか3-4日と短縮され、増殖した角質細胞がどんどん蓄積されて患部に白いかさぶた状の皮疹となるのです。
この疾患は眼球と唇を除いたどこにでも発症しますが、乾癬の広がりの程度や痒みの程度などの症状は人によって異なります。
乾癬の発症原因については不明ですが、遺伝的な要因やストレス、感染症、気候の変化、生活習慣などの内外的因子が関係し、発症および悪化するのと考えられています。
発症原因が不明であり、また慢性的な出没を繰り返すという特徴があるため、治療は症状が良くなっている状態を長くすることが目的の対症療法が中心となります。
ドボネックス軟膏は活性型ビタミンD3誘導体であるカルシポトリオールを有効成分とした尋常性乾癬治療用軟膏です。活性化ビタミンD3の中ではいちばん効果があるとされており、特に軽症の乾癬に有効と言われています。
活性型ビタミンD3とは食物に含まれているビタミンDではなく、皮膚で紫外線照射によって合成されたビタミンD3や体内で吸収されたビタミンDが肝臓や腎臓の酵素の働きを受けて変化したホルモンの一種のことです。
活性型ビタミンD3は皮膚の細胞質内に存在するビタミンD3受容体に結合し、乾癬の原因となっているケラチノサイトの増殖亢進や皮膚の分化障害といった現象を正常化する作用があり、それが乾癬の症状を緩和/消失させると考えられています。
元来活性型ビタミンD3はそのカルシウムの体内吸収促進機能や、血液中のカルシウム濃度の調整機能から、骨粗鬆症の治療などに使用されていました。
しかし乾癬を患っていた骨粗鬆症患者が骨粗鬆症治療薬として活性型ビタミンD3薬を服用したところ、乾癬の皮膚症状が治ってしまったことから乾癬の治療薬としても研究が進められ、今では乾癬治療の第一選択としてステロイド外用剤と共に広く使用されています。