ダイボベット軟膏は、初期乾癬(かんせん)および再発した乾癬の治療に使用される軟膏タイプの外用薬です。
乾癬は主に頭皮、ひじ、膝、臀部、陰部、爪、眉毛などの部分の皮膚が円形または楕円形に赤く盛り上がり、そこに銀白色のフケのような白く乾燥した皮膚片ができ、それがはがれ落ちていく病気です。年齢層を問わずに発症し、児童期/成人期早期(初期の発症)と40歳以降(後期の発症)の2つの発症ピークがあるほか、児童期に乾癬になった人の71%は家族もかかっていることから、遺伝性疾病素質があるとも考えられています。
乾癬には複数の病型があり、多くの場合は病変の部位と外観に基づいて分類されます。特に頭部は乾癬が発症しやすく、最初に症状が出る場所でもあり、新陳代謝によって剥がれ落ちる角質細胞がフケとして現われます。そのほか、症例の60-70%でかゆみを伴い、さらに痛みを感じることも多いようですが、ほとんどの場合はこれといった症状はなく、周囲の人に感染することもありません。
乾癬が発生する原因は解明されていませんが、乾癬にかかった皮膚深層部では白血球のひとつであるTリンパ球が多数集まっていることから、このTリンパ球の異常も乾癬を引き起こす原因と考えられています。しかし現在のところ乾癬を根治することはできないため、薬によってその症状を抑えることに治療の重点が置かれています。その治療方法としては主に、錠剤や注射、光線などを使用し、特に重症の乾癬を治療する全身療法と、その前治療として外用薬を使用する局所療法に分けられます。局所療法では副腎皮質ステロイドをはじめ、サリチル酸、コールタールなどが使用されるほか、いくつかの成分を組み合わせる場合もあります。
ダイボベット軟膏は、ビタミンD3誘導体と副腎皮質ステロイド薬を併用した治療用軟膏で、身表面積の30%以下に発症している軽度、中等度または重症の尋常性乾癬が対象です。副作用がほとんどなく、1日1回塗るだけで速やかに効果が現れることが実証されており、一般には4週間以内に乾癬皮疹が解消します。
有効成分のひとつであるカルシポトリオールは活性型ビタミンD3誘導体で、皮膚の細胞質内に存在するビタミンD3受容体に結合し、乾癬の原因となっているケラチノサイトの増殖亢進や皮膚の分化障害などの現象を正常化することで、乾癬の症状を緩和・消失させると考えられています。またもうひとつの有効成分は、ベタメタゾンと呼ばれる抗炎症性の局所ステロイドです。表皮全体で吸収されて糖質コルチコイド受容体と結びつき、抗炎症反応を引き出すほかに、ケラチン細胞の分裂を抑制する働きを持っています。
これら2つの成分がその性質を保つためには、カルシポトリオールはアルカリ性環境が、またジプロピオン酸ベタメタゾンは酸性環境が必要です。そのため、この2種類の成分を混合すると片方または両方の活性物質が分解されて不活性化するだけでなく、局所副腎皮質ステロイド外用薬はほかの局所薬と混ぜると製剤寿命が不確実になるため、従来では同時に使用することはできませんでした。そこで、一回でこれらの不適合物質を安心して使用できるように開発された薬がダイボベット軟膏です。ダイボベット軟膏は、安心してこれらの成分を同時に摂取できるだけでなく、相加作用および相乗効果が最大化するために、乾癬治療に対して大きな成果が期待できます。