タズレット・ジェル0.05%はビタミンA誘導体であるレチノイドのひとつであるタザロテンを有効成分とする局所用処方薬で、主に軽度から中程度の斑状(尋常性)乾癬、頭皮、爪の乾癬、ニキビ(ざ瘡)の治療に使用されています。
近年では肌のしわやたるみといった老化現象に対するアンチエイジング効果が注目され、美容商品としても使用されています。
皮膚は乾燥や外部の異物の侵入から体を守る保護、汗の分泌による異物や老廃物の排泄、体温調節などの役割を果たしている組織で、大きく分けて表皮、真皮に分類されています。
表皮とは角層、顆粒層、有棘層、基底層の4層からなる皮膚の一番外側の層で、一定期間で常に新しい表皮細胞と入れ替わりながら(ターンオ―バ)、体を乾燥や外部の異物から守るバリアの働きをしています。
表皮の内側が真皮で主にコラーゲンとエラスチン(弾力繊維)、そしてそれらを産生する繊維芽細胞からなっています。
またヒアルロン酸や水分がその隙間を埋めるようにして存在することによって皮膚の弾力と柔軟性を保つ役割をしています。
皮膚(肌)の老化とは加齢によるターンオ―バの低下、繊維芽細胞の減少に伴うコラーゲンやエラスチンなどの減少を原因とした肌のハリや弾力性の消失で、毛穴の目立ち、しみ、しわ、くすみ、たるみ、肌荒れなどの現象を指します。
加齢による経時老化と紫外線照射による光老化に分けられ、経時老化が外観的にも病理学的にも肌に損傷の少ない老化であるのに対し、光老化は肌の損傷が大きい老化であるとされています。
斑状(尋常性)乾癬は、皮膚細胞の新陳代謝が通常よりも速くなるために起きる症状で、まず皮膚に発疹ができ、その上に白色の鱗屑(皮屑)と呼ばれるカサカサした薄皮がどんどんできては、はがれていく皮膚角化疾病です。
通常、表皮細胞の再生周期は約28日間ですが、斑状(尋常性)乾癬にかかった場合は3-4日で完了するため表皮ケラチノサイト(皮膚を構成している主細胞)が過剰に増殖し、角化が亢進するために白いかさぶた状の皮疹が多く生じます。
16-22歳および57-60歳の人に多く発症し、世界人口の約1-5%がかかっていると言われており、欧米人の発症ケースが多いことから、欧米風の食生活や肥満、ストレスなどが関係していると考えられています。
また、乾癬にかかった皮膚深層部では、白血球のひとつであるTリンパ球が多数集まっていることから、このTリンパ球の異常も乾癬を引き起こす原因とされています。
乾癬ができる箇所は、頭皮、ひじ、膝、臀部、陰部、爪、眉毛をはじめとしてほぼ全身に発症する可能性があり、たいていは無症状または軽いかゆみ程度ですが、乾燥して角質化した表皮がフケのようにボロボロと落ちることが多々あります。
爪に現われた場合は爪の変形や、斑点、変色などの症状が見られ、場合によっては爪がはがれることもあります。細菌が原因の爪白癬(爪みずむし)と症状が似ており見分けがつきにくいため、爪にこれらの症状が現われた場合は、まず医者の診断を受けてください。
ニキビ(ざ瘡)はホルモン、皮脂、細菌の3つの要素が相互に関わり合い、毛包が炎症を起こした状態です。発症にはホルモンが深く関わっているため思春期にみられることが多く、主に顔を中心に現われますが、背中、胸の上部、肩などにも発症します。
皮膚は三層から成っていますが、この真ん中の層である真皮には脂腺という、皮膚の脂である皮脂を分泌する腺があります。この腺は毛包に付随しており、皮脂は死んだ皮膚細胞と一緒に脂腺から毛包を上がり、毛穴から皮膚表面に出てきます。ニキビ(ざ瘡)は、毛包に皮脂、死んだ皮膚細胞、細菌などが詰まり、皮脂が毛穴から出ることができなくなることで発症します。感染がひどくなると、内部に膿が溜まる膿瘍に発展することもあり、皮膚中で破裂した場合はさらに症状が悪化します。
軽症の場合は、無理につぶしたり、開こうとしない限りは跡形もなく消えますが、重症の場合は完治後も跡が残ることがあります。
タズレット・ジェル0.05%の有効成分であるタザロテンはビタミンAの類縁化合物で、体内では形態形成制御作用、細胞の分化増殖制御などの働きをするレチノイドの仲間です。
タザロテンは体内で活性型代謝物であるタザロテン酸へと変化した後、表皮細胞の核内受容体であるRARβとRARγといったレチノイン受容体へ結合し、遺伝子転写を変化させて皮膚の最外層となる角層の形成に関与しているI型トランスグルタミナーゼを減少させたり、角化細胞の異常分化促進因子の抑制、細胞の増殖や炎症を引き起こすタンパク質を減少すると考えられています。
この作用により亢進している角化細胞の分化や異常な増殖が正常化され、患部の炎症が鎮められることから、斑状(尋常性)乾癬の症状が改善されます。
またニキビ(ざ瘡)においては毛包漏斗と呼ばれる毛包部分の表皮が真皮部分に陥入した箇所において毛穴の閉塞の原因となる角質層を薄くしたり、濾胞上皮が過剰な剥離を阻害することによって毛穴の閉塞を妨げることによって効果を発揮するとされています。
さらに表皮の角質細胞の剥離を促進し皮膚のターンオーバーを活発にさせる作用や、真皮の繊維芽細胞を活性化によるコラーゲンやヒアルロン酸産生の促進、血管新生作用などが肌にハリを与え、しわ、シミ、たるみなどを取り除くためにアンチエイジング効果があるとされています。