タズレット・ジェル0.05%は、ビタミンA誘導体であるレチノイドの局所用処方薬で、軽度から中程度の斑状(尋常性)乾癬治療用の薬です。また頭皮、爪の乾癬、ニキビ(ざ瘡)治療にも使用できます。
斑状(尋常性)乾癬は、皮膚細胞の新陳代謝が通常よりも速くなるために起きる症状で、まず皮膚に発疹ができ、その上に白色の鱗屑(皮屑)と呼ばれるカサカサした薄皮がどんどんできては、はがれていく皮膚角化疾病です。通常、表皮細胞の再生周期は約28日間ですが、斑状(尋常性)乾癬にかかった場合は3-4日で完了するため、皮膚を構成している州細胞である表皮ケラチノサイトが過剰に増殖し、角化が亢進するために白いかさぶた状の皮疹が多く生じます。16-22歳および57-60歳の人に多く発症し、世界人口の約1-5%がかかっているといわれており、欧米人の発症ケースが多いことから、欧米風の食生活や肥満、ストレスなどが関係していると考えられています。また、乾癬にかかった皮膚深層部では、白血球のひとつであるTリンパ球が多数集まっているため、このTリンパ球の異常も乾癬を引き起こす原因とされています。
乾癬ができる箇所は、頭皮、ひじ、膝、臀部、陰部、爪、眉毛をはじめとしてほぼ全身に発症する可能性があり、たいていは無症状または軽いかゆみ程度ですが、乾燥して角質化した表皮がフケのようにボロボロと落ちることが多々あります。爪にあらわれた場合は爪の変形や、斑点、変色などの症状がみられ、場合によっては爪がはがれることもあります。細菌が原因の爪白癬(爪みずむし)と症状が似ており見分けがつきにくいため、爪にこれらの症状があらわれた場合は、まず医者の診断を受けるのがよいとされています。
ニキビ(ざ瘡)はホルモン、皮脂、細菌の3つの要素が相互に関わり合い、毛包が炎症を起こした状態です。発症にはホルモンが深く関わっているため思春期にみられることが多く、主に顔を中心にあらわれるほか、背中、胸の上部、肩などにも発症します。
皮膚は三層から成っており、この真ん中の層である真皮には脂腺という、皮膚の脂である皮脂を分泌する腺があります。この腺は毛包に付随しており、皮脂は死んだ皮膚細胞と一緒に脂腺から毛包を上がり、毛穴から皮膚表面に出てきます。ニキビ(ざ瘡)は、毛包に皮脂、死んだ皮膚細胞、細菌などが詰まり、皮脂が毛穴から出ることができなくなることで発症します。感染がひどくなると、内部に膿が溜まる膿瘍に発展することもあり、皮膚中で破裂した場合はさらに症状が悪化します。軽症の場合は、無理につぶしたり、開こうとしない限りは跡形もなく消えますが、重症の場合は完治後も跡が残ることがあります。
タズレット・ジェル0.05%の有効成分であるタザロテンは、レチノイドの仲間です。レチノイドはビタミンAの類縁化合物で、体内では形態形成制御作用、細胞の分化増殖制御などの働きをし、皮膚においては表皮角化細胞の増殖促進作用により表皮を厚くし、角層を薄く密にします。また表皮角化細胞間にヒアルロン酸などを沈着させるために肌が潤い、さらに皮膚再生の促進、角質の剥離によるメラニン排泄促進、ニキビ(ざ瘡)の原因となるアクネ菌の発育抑制などの作用もあります。表皮の下にある真皮においては、コラーゲンの産生が促進されるとともに分解が抑制され、血管新生も起こるために傷の治りを早めると同時に、肌にハリが出て小じわが改善される効果もあるとされています。
なおニキビ(ざ瘡)治療で使用する場合、使用開始後は症状が悪化することがありますが、4週間目くらいから効果があらわれてきます。また、タザロテンの使用中は皮膚が日光に対して敏感になるため、患部を紫外線から保護するよう心がけてください。