ダリロン7.5mgは、切迫尿失禁、尿意ひっ迫、頻尿の症状を伴う過活動膀胱(ぼうこう)の治療薬です。
過活動膀胱は(OAB)は「尿意切迫を有し、通常これに頻尿および夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁は伴う場合もあれば伴わないこともある状態」と定義されている疾患です。
平均的な1日の排尿回数は、日中で5-7回、睡眠中は0回が正常と考えられており、これを超える場合は「頻尿」、または「夜間頻尿」と考えられます。また「尿意切迫」は急に強い尿意をもよおす状態で、尿意切迫が起こって尿が漏れてしまうことを「切迫性尿失禁」と言います。
健康な人の場合、膀胱に400-500mlの尿を溜めることができますが、過活動ぼうこうの人では100ml程度の尿で膀胱が収縮し、尿意をもよおします。欧米では成人の約16%が、また日本排尿機能学会によると、日本では40歳以上の男女の12.4%である約810万人が過活動膀胱であると推定されています。
過活動膀胱の原因は、神経因性と非神経因性の2つに分けられ、神経因性では脳や脊髄などの障害により起こります。また神経因性はさらに、脳血管障害、パーキンソン病、多系統萎縮症、認知症、脳外傷など、排尿中枢のある脳幹部橋より上位の障害と、脊髄損傷、多発性硬化症、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、二分脊椎など、脳幹部橋より下位の障害に分類されます。上位障害の場合、通常は畜尿時に大脳によって制御されるべき橋排尿中枢が抑制されずに膀胱収縮が起き、下位障害の場合は、神経と仙髄排尿中枢の間に反射経路の再構築がなされて抑制のきかない膀胱収縮が生じるため、過活動膀胱の症状が起こると考えられています。
一方、非神経因性は過活動膀胱の原因の約80%を占めており、主に加齢、骨盤底の脆弱化、前立腺肥大症などの下部尿路閉塞などにより起こりますが、実際には原因不明の特発性がいちばん多いとされています。
膀胱収縮に関係している主な神経伝達物質は、コリン作動性神経より放出されるアセチルコリンで、膀胱平滑筋に存在するムスカリン受容体を介して収縮反応をおこします。
ムスカリン受容体はM1からM5のサブタイプに分かれ、このうち、膀胱収縮に主に関与するのはM3受容体であると考えられています。そのため膀胱の不随意収縮を抑えるには、膀胱を収縮させる働きを持つM3受容体を効果的に抑制する必要があります。
ダリロン7.5mgは、有効成分のダリフェナシンがM3受容体に選択的に結びつき、膀胱の筋肉の収縮を抑制することで畜尿量を増やす薬です。また持続作用が長いために1日1錠の服用で効き目が長時間続き、さらに中枢神経系に与える影響や心血管系の副作用が少ないのが特長です。