スペクトラ75は、鎮静、睡眠増強、抗不安作用を持つ三環系第一世代の抗うつ剤です。
厚生労働省の報告によると、うつ病は日本人の約15人に1人が経験し、また別の調査では6人に1人がうつ病を発症するという結果が出ています。
また2007年の日本国内での自殺者約3万3000人のうち、うつ病が原因・動機とみられる自殺者が約18%を占めており、その大部分が40-60歳であったとの報告もあるほど、現在ではもっとも深刻な病気のひとつです。
うつ病を発症する原因としては、過度のストレスなどの心因的要素や、身体的不調、脳内血行障害、更年期障害、ホルモンバランス不調、生体リズム不調、季節の変化などが考えられていますが、いまだにはっきりとした原因はわかっていません。
しかしそのなかでも最も有力と言われているのが、脳内の神経伝達物質であり、意欲や活力を伝達し、精神を安定させる働きを持つノルアドレナリンやセロトニンの活動低下(減少)により発症するとされるモノアミン仮説です。
これらの物質は神経細胞から放出され、受容体と呼ばれる物質と結合することで作用します。しかしすべてが受容体と結合するわけではなく、結合しなかった分は再利用のために神経終末で取り込まれてしまい、神経伝達物資としての役目を果たさなくなります。
ノルアドレナリンやセロトニンが何らかの原因により減少し、それによってこれらの物質が総体的に少なくなることで脳内神経伝達物質のバランスがくずれ、その結果としてうつ病が発症するという考え方がモノアミン仮説です。
うつ病を治療する薬はその作用機序などにより何種類かに分けることができますが、スペクトラ25は三環系抗うつ薬という部類に属し、主にノルアドレナリンやセロトニンが神経終末で取り込まれるのを阻害することで、これらの物質の脳内における濃度を高める働きをします。
三環系抗うつ薬はいちばん最初に開発された抗うつ剤で、主要成分の化学構造に3つの環状構造があることからその名前がつけられました。
薬が開発された年代により第一世代から第三世代に分類され、世代を追うごとに副作用が減るという特長がありますが、その一方で、古い世代の三環系抗うつ薬のうつ病改善率は70-80%とも言われているにもかかわらず、新しい世代の三環系抗うつ薬では世代を追うごとに効果が弱くなる傾向にあります。
そのため新しい抗うつ薬が出回っている今でも、古い世代の三環系抗うつ薬が高い頻度で使用されているようです。
スペクトラ75の有効成分である塩酸ドキセピン(塩酸ドクセピン)には、緊張を解き、睡眠を助け、ムードを盛り上げてやる気を起こさせる作用があるとされ、またアルコール依存症や、例えばがんのようなほかの病気がもたらす不安に対する抗不安作用、鎮痛、睡眠増強などの効果もあるとされています。
さらに、定量用では覚醒作用を持つヒスタミンH1受容体の働きを阻害するために催眠薬としての効力も発揮し、50-600mgではセロトニンを細胞内に取り込むたんぱく質である5-HTT(セロトニン・トランスポーター)や、ノルアドレナリンを細胞内に取り込むたんぱく質のNAT(ノルアドレナリン・トランスポーター)への阻害作用が働くためにノルアドレナリンやセロトニンが吸収されるのを抑え、抗うつ剤としての作用を発揮します。