シネメット25/250はレボドパとカルビドパ調合のパーキンソン病治療薬です。
パーキンソン病とは1918年にジェームス・パーキンソン医師によって報告された進行性神経疾患で、安静時の手足のふるえ(振戦)、筋固縮(筋肉がこわばる)、動作緩慢、姿勢反射障害(バランスがとりにくくなる)などの症状に代表される運動障害を特徴とした疾患です。
日本においては人口10万人に対し100~150人の患者がいるとされており、平均発症年齢は50歳代後半から60歳代と比較的高齢になってからの発症が多いとされています。
また、厚生労働省によって難病として特定疾患の一つに認定されています。
正常な状態における随意運動の発現と制御は、大脳基底核と呼ばれる神経細胞が集合している部位の情報伝達機能によって発生します。
まず大脳基底核の一つである黒質細胞がドパミン(ドーパミン)と言う神経伝達物質を生成します。
生成されたドパミンは伝達情報入力部位の線状体細胞で神経活動情報に変換され、伝達情報出力部位である淡蒼球内節や黒質網様部に抑制性の神経活動情報として入力されます。
この淡蒼球内節や黒質網様部には脳の大脳新皮質から興奮性の神経活動も入力されています。
淡蒼球内節や黒質網様部はこれらの入力された神経活動類を調整する役割があり、その調整過程を経ると適切な運動情報が視床、大脳皮質へ伝達されて運動が発現すると言われています。
パーキンソン病はこの黒質細胞の減少によるドパミンの欠乏が、淡蒼球内節や黒質網様部による神経活動調整機能を不能にし、結果として円滑な運動の発現ができなくなることによって発症すると言われています。
黒質細胞は年齢と共に徐々に減少するものですが、パーキンソン病患者においてなぜ急激に減少してしまうかはほとんど解明されていません。
パーキンソン病を治癒させたり、進行を止める治療法は現在のところ存在しません。
しかし症状を改善し、機能を何年間も維持させることのできる薬物治療、外科治療は存在します。
以前は発病後10年もしたら寝たきりになってしまうと言われていましたが、現在では新薬や効果の高い外科治療の進化、公的援助の改善などによりその予後が著しく改善されています。
シネメット25/250の有効成分の一つであるレボドパは、パーキンソン病治療の第一選択薬として広く使われている、ドパミン(ドーパミン)を補うための成分です。
ドパミン自体は血液脳内関門(脳の血管から神経細胞へ有害な物質が移行しないための選択的な障壁)を通過することができませんが、服用されたレボドパはこの血液脳内関門を通過し、脳内でドパ脱炭酸酵素として知られている芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素によってドパミンへ変換されて大脳基底核の機能を促進します。
しかしながらレボドパは末梢神経系でもドパミンに変換されることがわかっており、そのことによる吐き気や顔面潮紅などのさまざまな副作用が問題となっていました。
シネメット25/250のもう一つの有効成分であるカルビドパは、レボドパのドパミン変換を触媒する芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素阻害剤ですが、このカルビドパは血液脳内関門を通過できません。
つまりカルビドパは、レボドパが血液脳関門を通過して脳内に入る前のレボドパからドパミンへの変換作用を阻害する役割を果たします。
カルビドパの併用によって、脳内でのドパミン補足量を保持するための余剰なレボドパ摂取が必要なくなり、末梢神経系でのレボドパからドパミンへの変換も阻害されることから、問題となっていたレボドパによる副作用が抑えられ、レボドパの薬理作用を最大限に活かすことができるようになっています。