シトミド250mgは非ステロイド系の抗男性ホルモン薬で、前立腺がんの治療に使用される薬です。
前立腺がんは、男性特有の器官である前立腺にできるがんで、日本での死亡者数は年々増えており、1950年の死亡率と比較すると2000年には約17倍に増加しているとの統計もあります。また前立腺がんにかかる約90%が60歳以上と高齢者に多い病気であるため、今後の高齢化の進展に伴いその数は増えて行くと予測されており、男性のがんでは肺がんに次いで2番目の発生率になるとも言われています。前立腺がんの原因はまだよくわかっていませんが、主に食生活の欧米化による脂肪摂取量増加などが原因ではないかと考えられています。
前立腺がんの治療は、手術(前立腺全摘除術)、放射線治療、ホルモン療法などがあり、病期がどの段階にあるかで選択できる治療法や組み合わせが決まります。このうちホルモン療法に使用される抗ホルモン薬には、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(LHRH)の分泌を抑えるLHRHアナログと呼ばれる薬と、がん細胞の成長や増殖を促進する働きを持つテストロテロンの分泌を抑制する抗アンドロゲン薬の2種類がありますが、シトミド250mgは非ステロイド性の抗アンドロゲン薬に属する薬です。
血中に分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)の95%は精巣で合成されるテストステロンで、5%は副腎由来のアンドロゲンです。副腎由来のアンドロゲンは非活性で、末梢組織や前立腺組織でテストステロンに変換されます。前立腺組織に到達したテストステロンは酵素の働きによって強力なアンドロゲン活性を持つジヒドロテストステロン(DHT)に変換されますが、このDHT は前立腺細胞内のアンドロゲン受容体に結合することで前立腺の肥大や、前立腺がんの発症に深く関わっているとされています。
シトミド250mgの有効成分であるフルタミドは、DHT とアンドロゲン受容体との結合を阻害することにより抗アンドロゲン作用を発揮し、前立腺腫瘍の細胞増殖を抑制します。前立腺がんのホルモン療法では、抗アンドロゲン薬とLHRHアナログ剤を組み合わせたMAB療法が行われるのが一般的ですが、この場合高い治療効果が期待できる一方で、テストステロンの分泌が抑制されるために性機能の低下が起こるのが問題となっています。しかし、シトミド250mgを含む非ステロイド型の抗アンドロゲン薬だけで治療した場合にはテストステロンの分泌が抑制されず、性機能が維持される可能性が高まるため、性機能の維持を希望する人やテストステロンが少なくなって筋力が低下するのを避けたい人は、シトミド250mgによる単独療法が効果的であるともされています。
しかしながら、フルタミドはほかの同類薬と比較して女性化乳房やポテンツ低下などホルモンに関する副作用が少ないというメリットがありますが、その反面で重い肝機能障害を引き起こす可能性が比較的高いという欠点があります。そのため、服用には医師による適切な指導と充分な注意が必要です。