ベンツトロプ20mgは、パーキンソン病のあらゆる症状を改善する薬で、特にふるえに対して効果を発揮します。そのほか、神経弛緩薬による錐体外路反応(錐体外路性終末欠陥症候群を除く)の治療に使用されることもあります。
ドパミンは運動やホルモン調節に関わっている脳内の神経伝達物質、アセチルコリンは血管拡張、心拍数低下、消化機能亢進、発汗などに深く関係している神経伝達物質ですが、本来はこの二つの物質のバランスが保たれているため、自分の意志で体を動かすことができます。ところが、何らかの原因でドパミンが不足し、その反対にアセチルコリン量が相対的に増加することで起こる、運動障害を伴う神経変性疾患がパーキンソン病です。40歳以上では約250人に1人、65歳以上では約100人に1人がかかると言われています。
主な症状として、安静時のふるえ、筋肉のこわばり、動作のにぶり、体のバランス障害などの運動症状のほか、精神症状、行動障害、睡眠障害、自律神経症状、消化器症状、起立性低血圧、食後性低血圧、発汗過多、あぶら顔、非尿障害・勃起不全などの非運動症状も見られます。
パーキンソン病は、現段階ではどんな薬を使用しても治癒や進行を止めることができません。そのため、ドパミン量とアセチルコリン量の不均衡を調整することで体の動きを改善し、機能を長年維持することに治療の重点が置かれており、異なる作用を持つ2種類以上の薬を使用するのが一般的です。
そのうちのひとつが、ベンツトロプ20mgの有効成分であるベンツトロピン(ベンズトロピン)で、アセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害する働きを持つ抗コリン作用薬(抗コリン薬)です。
抗コリン作用薬は、もっとも古くからパーキンソン治療に使用されている薬で、アセチルコリンが影響する神経細胞を抑える作用があり、特にふるえの症状に有効であると言われています。一般にパーキンソン病の初期に使用され、病気の後期にはレボドパの補助薬として使用されることが多いようです。
アセチルコリンは、受容体と呼ばれる受け皿と結合することによってさまざまな作用を発揮しますが、このアセチルコリン受容体はムスカリン受容体とニコチン受容体の二つに分けることができます。ムスカリン受容体は、末梢では副交感神経の神経終末に存在し、筋肉の収縮を引き起こすため、この作用を阻害することでこの作用を抑制するのが抗コリン作用薬です。
アセチルコリンは、心臓や気道などの平滑筋細胞の収縮を刺激する働きがあり、抗コリン作用薬を服用することでこの物質が引き起こすけいれん、唾液過多、瞳孔の収縮を抑え、パーキンソン病に伴う運動障害の症状を改善することができます。