ジプリマ3は脳内物質のドパミンに働き掛けて、性的刺激を与えることで勃起を促す、新しいタイプの性機能不全治療薬です。
勃起不全(ED)は、勃起機能障害、勃起障害とも言われる男性の性機能障害(SD)のひとつです。勃起に時間がかかる、途中で萎える、満足な性交ができないなどの症状が現われますが、完全に勃起ができない状態ではありません。
勃起不全は、一般的には年齢や精神的要因により、陰茎海綿体の動脈が充分に拡がらないために、血液が充分に流れ込まないことが原因です。 実際にストレスやコンプレックス、過去のトラウマなど精神的、心理的な要素が原因となって勃起不全を引き起こすことも確かですが、それ以外にも、糖尿病、高血圧症、高脂血症、喫煙、飲酒などの生活習慣や生活習慣病でも起こることがあります。
勃起は、性的刺激によって脳からの信号が神経を通じて陰茎に伝わり、海綿体が血液を含むことで膨張し、硬くなった状態ですが、この陰茎海綿体の血管、平滑筋の収縮や弛緩に関わっているのが、視床下部に存在するD2(ドパミン2/ドーパミン2)受容体です。
そのD2受容体を刺激する作用を持つことから、バイアグラなどに続く勃起中枢を活性化するED治療薬として開発された薬がジプリマ3です。
有効成分の塩酸アポモルヒネ(アポモルフィン)は、19世紀に催吐剤として使用されて以来、20世紀前半には統合失調症患者の鎮静剤として、またアルコール中毒患者や麻薬中毒患者の行動改善薬として使用されてきました。
塩酸アポモルヒネはドパミンと化学構造式が非常に似た成分で、D2受容体と結合して作動薬として働くことから、視床下部から海馬にいたるオキシトシン(ホルモン)経路を活性化し、中脳を経て下位勃起中枢(仙髄)を経由したのち、副交感神経に属する骨盤神経に刺激を伝えます。
さらにその刺激は自律神経終末から一酸化窒素(NO)を遊離させ、陰茎平滑筋における酵素の活性化により平滑筋が弛緩する結果、海綿体への血液流入が増加して勃起を誘発すると考えられています。
ジプリマ3は、一般に2-3mgの舌下錠として使用され、20分以内にその効果が現われるとされている反面で、バイアグラ同様、降圧薬や硝酸剤などとの併用で過度の血圧の低下を招くおそれがあるため、使用には注意が必要です。
またD2受容体には運動機能を調節する働きもあり、脳内のドパミン系の神経の働きが悪くなることで手足のふるえ、こわばり、体の動作が不自由になるなどの不随意運動を呈するパーキンソン病の症状改善に対しても、アポモルヒネはその効果が期待されています。