ウルトラプロクトは、痔(じ/ぢ)や軽度の直腸炎の治療薬で、3種類の有効成分を持つ混合剤です。
塩酸シンコカイン(一般名:塩酸ジブカイン)は、エステル型と呼ばれる局所麻酔薬で、一般的に用いられる局所麻酔成分の中で最も効力が強いと言われており、裂肛や直腸炎の症状として起こる痛みや痒みを取る働きがあります。
一方2種類のフルオコルトロン(ピバリン酸(ピバル酸、トリメチル酢酸塩)フルオコルトロンとヘキサノン酸(カプロン酸)フルオコルトロン)はステロイド性抗炎症剤で、痒みなどの炎症を抑える働きがあるほか、毛細血管を拡張し血流を良くする事で患部の細胞間浮腫と組織浸潤を退行させると共に痔の原因となる毛細血管増殖を抑制します。
痔は、肛門部周辺の静脈が圧迫され、血液の流れが滞ることなどによっておこり、基本的に「血流」の疾患であると言われています。
代表的な症状として、裂肛(切れ痔)、痔核(いぼ痔)、痔瘻があります。裂肛(切れ痔)は、男性に比べ女性に多いと言われており、肛門管(肛門の上皮膚部分)が、切れたり裂けたりして痛みや出血を伴います。
人間の直腸や肛門付近の血管は、頭の方向に向かって血液を循環させる為、普段からとても大きな圧力が直腸や肛門付近の血管に掛っています。
そこへ、日常生活の中で起こりうる様々な要因(長時間の立ち仕事や座り仕事、便秘や下痢を繰り返す、など)によって肛門付近の体液の鬱帯や圧力により発症するため、人間特有の疾患と言われています。
一概に痔と言っても症状により治療方法が異なる事から、また排便時などの出血を痔による物だと誤解し、直腸癌など重大な病気を放置している場合がある事からも、痔と思われる症状がある場合は、病院で検査を受ける事が勧められています。
直腸炎の原因は、クローン病や潰瘍性大腸炎、性感染症(淋病感染症・梅毒・クラミジア-トラコマチス感染症・単純ヘルペスウイルス・サイトメガロウイルス感染症など)、男性の同性愛行為などがあります。
さらに、免疫系に障害のある患者も直腸炎を発症するリスクが高く、特に単純ヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスによる感染症が原因になる事が多いと言われています。
ほかにも、サルモネラ属などの細菌が原因であったり、抗生物質の使用で腸内の常在菌が減少し、他の細菌が増殖することによって発症したり、前立腺癌や直腸癌の治療のために行なわれる直腸や直腸周辺の放射線療法被曝が原因になることもあり、様々な原因があると考えられています。
典型的な症状は痛みを伴わない出血や直腸からの粘液流出です。しかし、淋菌・単純ヘルペスウイルス・サイトメガロウイルスなどの感染症で直腸炎を起こしている場合は肛門と直腸に激しい痛みを感じる事があります。