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2014-05-26

ソース(記事原文):メッドスケープ

肥満治療薬候補と目される糖尿病治療薬

メッドスケープ(2014年5月26日) ― ミリアム・タッカー(Miriam E.Tucker)著

ラスベガス ― 過体重および肥満の非糖尿病者に対し、血糖降下薬リラグルチド(ノボノルディスク社製造のビクトーザ[Victoza])を投与すると、体重減少しやすくなることが、多国間SCALE試験(肥満および糖尿病前症試験)の結果で示され、第23回米国臨床内分泌学会議(23rd Annual Scientific and Clinical Congress of the American Association of Clinical Endocrinologists:AACE)で発表された。

ニューヨーク市にあるコロンビア大学医学部(Columbia University College of Physicians and Surgeons)の内科教授で、ニューヨーク肥満栄養研究センター(New York Obesity Nutrition Research Center)の責任者の一人であるザビエル・ピスニェ(Xavier Pi-Sunyer)博士は、別の複数の試験において、注射用グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)アゴニストは、プラセボよりも有意な体重減少をもたらし、認可済みの減量薬に匹敵する効果を発揮したとしている。

「体重は試験開始前よりも8%減少した」と同氏はメッドスケープ・メディカルニュース(Medscape Medical News)に語った。「この結果はどの市販薬にも劣らない。フェンテルミンとトピラマート合剤に遜色なく、それ以外のどの薬剤よりも優れている。リラグルチド(GLP-1アゴニスト)は、フェンテルミンとトピラマート合剤に匹敵するものと考えられる」

米国食品医薬品局(FDA)諮問委員会は、高用量リラグルチド3.0 mgを肥満への新規適応として2014年9月11日に審査する予定である。リラグルチド1.8mgは糖尿病への適応で既に認可されている。

SCALE試験では、吐き気と嘔吐がプラセボと比べてリラグルチドで有意に多かったが、こうした症状は時間経過と共に回復した。

また、リラグルチドに無作為に割り付けられた患者は、プラセボと比較して、膵炎および胆嚢障害のわずかなリスク上昇が認められた。ピスニェ氏は「正味の影響は1%未満であったが、プラセボ群よりもリラグルチド群で若干大きかった。調査は継続中であり、患者の経過追跡も行われている」と述べている。

バージニア州スターリングにある内分泌・糖尿病・骨粗鬆症クリニック(Endocrine, Diabetes, and Osteoporosis Clinic)のファルハド・ザンギャネ(Farhad Zangeneh)博士は、有害事象の発生率が低いことから、薬剤との因果関係に関する結論を出すのは無理である、とメッドスケープ・メディカルニュースに語った。「肥満や糖尿病『自体』が、膵炎や胆嚢疾患の原因となり、多くの背景ノイズが存在する」と同氏は述べている。ザンギャネ氏は本研究に関与していない。

体重減少

肥満度指数(BMI)が27 kg/m2~30 kg/m2以下で、かつ1つ以上の併存症を有する患者3,731人を本試験に登録した。食事および運動との併用で、リラグルチド3.0 mgを1日1回皮下投与する群またはプラセボを皮下投与する群に、被験者を2:1の比率で無作為に割り付けた。

56週間の試験を完遂した2,590人のうち、女性の占める割合は78.5%、平均年齢は45歳、平均体重は106 kg、平均BMIが38 kg/m2であった。約3分の2が糖尿病前症を患っていた。本試験を完遂した患者の割合は、リラグルチド群の方がプラセボ群よりも多かった(72% 対 64%)。

56週時点で、体重減少率はリラグルチド群で8.0%(8.4 kg)であったのに対し、プラセボ群では2.6%(2.8 kg)であった(P<0.0001)。体重が5%以上減少した患者の割合は、リラグルチド3.0 mg群で64%であったのに対し、プラセボ群では27%であった(P< .0001)。また、体重が10%超減少したのはリラグルチド群で33%、プラセボ群で10%であった。

体重減少は、糖尿病前症の状態や試験開始前のBMIとは関係なく生じた、とピスニェ氏は報告している。

リラグルチド群では、収縮期圧が2.82 mmHg、拡張期圧が0.89 mmHg低下した。脂質プロファイルは改善し、HDL(高密度リポタンパク質)コレステロールが増加し、LDL(低密度リポタンパク質)、VLDL(超低密度リポタンパク質)コレステロール、トリグリセリドが減少した(全体の有意性P<0.02)。

胃腸における副作用

最も多く報告された副作用には、軽度から中等度の吐き気と嘔吐があった。有害事象(主に胃腸)に起因する試験脱落率は、リラグルチド群で9.9%であったのに対し、プラセボ群では3.8%であった。

ピスニェ氏がメッドスケープ・メディカルニュースに語ったところによると、吐き気や嘔吐の大半は、最初の4週間以内の初期段階に出現した。「これにより投与量の調整が必要となり、開始時0.6 mgとし、個々の効き目に応じて0.6 mg増量することとした。4~5週間後、副作用に改善がみられ、56週目にはこうした問題を抱える人はほとんどみられない」

胆嚢障害と膵炎の発生率は、リラグルチド群で100患者・年あたり2.7例(胆嚢障害)と0.3例(膵炎)であったのに対し、プラセボ群で100患者・年あたり1.1例(胆嚢障害)と0.1例(膵炎)であった。膵炎と胆嚢に関連する問題の同時併発は、リラグルチド群で1人、プラセボ群で1人報告された。

ザンギャネ氏によれば、慢性疾患としての肥満治療における新しい体制の下、メッドスケープ・メディカルニュースが以前報道しているように、糖尿病と同じぐらい肥満に重点を置く必要がある。両疾患に対する治療法は、生活習慣改善と薬物療法の併用である、と同氏は述べている。「医療には、常にリスクとベネフィットのバランス(Risk-Benefit Ratio)がついて回る。肥満を放置するとリスクは避けられない」

ピスニェ氏は、ノボノルディスク社(Novo Nordisk)、ヴィーバス社(Vivus)、エーザイ社(Eisai)、Zafgen社、イーライリリー社(Lilly)の顧問委員会に属している。ザンギャネ氏は、ノボノルディスク社、 アストラゼネカ社(AstraZeneca)、イーライリリー社、ベーリンガーインゲルハイム、 エーザイ、ヴィーバス社、アッヴィ社(AbbVie)、ヤンセン社(Janssen)、ブリストルマイヤーズスクイブ(Bristol-Myers Squibb)において、専門医と広報担当のいずれか一方または両方を任されている。

第23回米国臨床内分泌学会議(23rd Annual Scientific and Clinical Congress of the American Association of Clinical Endocrinologists:AACE) 2014年5月16日発表


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