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2012-09-12
ソース(記事原文):インター・プレス・サービス
ミソプロストール-妊産婦死亡率の低下に欠かせないもの
インター・プレス・サービス(2012年9月3日)― ゾフィーン・エブラヒム(Zofeen Ebrahim)著
カラチ、2012年9月12日(IPS)-「ミソプロストールのない生活なんて私には想像できません」婦人科医で、産科医でもあるアズラ・アーサン博士(Dr. Azra Ahsan)はこう話します。同氏は、女性が分娩後の出血により死亡するのを防ぐため、意見が分かれているこの薬を10年以上にわたり使用しています。
もともとは胃潰瘍を治療するためのミソプロストールは、2000年以降、陣痛を誘発したり分娩後出血(PPH)を防いだりするその能力のために人気が高まっています。
「パキスタンで使用登録を受けた2009年よりずっと前から、この薬が女性を死から救うことを私は知っていました」政府の国家妊産婦・新生児保健委員会(National Commission on Maternal and Neonatal Health)のメンバーでもあるアーサンはこう述べました。
WHOガイドラインはPPHに対するミソプロストールの使用を推奨しており、一方、世界産婦人科連合(International Federation of Gynaecology and Obstetrics : FIGO)は、オキシトシンやエルゴメトリンのようにレギュラーの「子宮収縮」薬を利用できない状況ではミソプロストールの使用を勧めています。
2011年4月にミソプロストールを必須医薬品リストに記載したWHOに対し、これを削除するよう求める動きについてアーサンのような医師らは失望しています。必須医薬品とは、「集団の大半の医療ニーズを満たし」、「地域社会が支払うことのできる価格で、常に十分な量と適切な投与形態で利用できる」薬です。
WHOは「必須医薬品リストにミソプロストールを入れるという最近の決定を再考」すべきという提言の中で、ジャーナル・オブ・ザ・ロイヤル・ソサイアティ・オブ・メディシン(Journal of the Royal Society of Medicine)8月号掲載の科学的研究の結果が取り上げられています。
研究を率いたアリソン・ポロック(Allyson Pollock)は、ミソプロストールがPPHの防止に効くことを示すエビデンスは不十分であると述べました。その代わり、彼女は貧しい国に対して、分娩後の出血リスクを低下させるためプライマリケアを改善するとともに貧血を防ぐよう強く求めています。
しかしながらアーサンの話では、パキスタンの妊娠例の約80%は分娩後に母親の子宮が自然に収縮しないことから、出血を抑える目的での子宮収縮薬の使用を求めています。
「パキスタンにおける妊産婦死亡の27%近くは、分娩後の過剰な失血が原因です。」アーサンはIPSに対しこのように説明しました。
最新のパキスタン人口・健康調査2006(Pakistan Demographic and Health Survey (2006))によれば、同国の妊産婦死亡率は生児出生100,000件ごとに276件であり、南アジアの中でも極めて高い比率のうちに入っています。
世界的に妊産婦死亡の主な原因となっている出血は、WHOによって、分娩後の500mL以上の失血と定義されています。
パキスタンでも、またブラジルのような他の途上国でも、費用をかけずに流産を誘発する目的でミソプロストールが誤った使い方をされているという事実が、この薬をめぐる論争に加わっています。
「皆さんが、ミソプロストールは適正使用されている、誤った使い方をされている、あるいは乱用されていると考えるかどうかなんて気にしません・・・私は、この薬のおかげで母親たちが死を免れることを知っています」アーサンはこう話しています。
他の子宮収縮薬とは異なり、冷蔵保存の必要がなく、また訓練を受けた助産師が容易に経口投与できるという利点がミソプロストールにはあると、アーサンは述べました。
FIGOと国際助産師連盟(International Confederation of Midwives)による共同声明は、次のようにうたっています。「熟練した助産師がいない自宅出産の場合、ミソプロストールはPPHの抑制に利用できる唯一の技術となる可能性がある。」
ズルフィカー・ブッタ(Zulfiqar Bhutta)は、アガ・カーン大学(Aga Khan University)(カラチ)母子保健長であり、国連事務総長の母子保健に関する独立専門家審査グループのメンバーです。同氏は、ミソプロストールをもっとしっかり評価する必要があるというポロックの考えに同意しています。
「ただし、少々の欠点を直そうとして却って全体を駄目にしてしまうようなことは、まだしばらくはしたくありません」IPSに対し、ブッタはこう語りました。また「適切な状況での使用を増やすとともに、誤った使用を注意深く監視する必要があります。ミソプロストールは特効薬ではなく、必要不可欠な妊産婦サービスの提供で安心感につなげてはいけません」とも話しました。
「最近発表された論文のポイントは、科学と救世主的熱意を切り離そうとすることだと私は考えています」『カウントダウン2015(Countdown to 2015)』の共同議長でもあるブッタはこう話します。カウントダウン2015は、妊産婦の健康に関する国連ミレニアム開発目標5(U.N. Millennium Development Goal Five)の進捗を追跡する世界的な科学・支持グループによる会議です。
「ミソプロストールは前途有望であり、私たちはその安全な使用について評価するため最善を尽くすべきです」ブッタはこう述べました。「しかし、パキスタンには、すべての分娩で使用するため各家庭への大量配布を勧めている人たちがいます。これは費用対効果が高いでしょうか、それとも実際に安全でしょうか?」
ポロックの研究は、国際的な関心を呼んでいます。国際家族計画連盟(International Planned Parenthood Federation)のウペカ・デ・シルバ(Upeka de Silva)は、もしWHOがミソプロストールをリストから外せば、それは「数え切れないほどの女性が救命治療を受けられず、完全に予防できる妊娠関連合併症に苦しまざるを得ない」ことを意味すると、電子メールでIPSに伝えてきました。
「すべての研究には限界があること、また妊産婦ケアのベストプラクティスに関する継続的な研究が必要であることを、私たちは十分に認識しています」デ・シルバはこう述べています。
「しかし、女性の差し迫ったニーズを満たすため、とりわけ農村部の医療が行き届いていない地域社会においては、私たちは、リプロダクティブ・ヘルスに係る複数の適応症に対するミソプロストールの安全性と有効性を支持している文献および専門家の豊富なエビデンスに導かれていると確信しています。」
さらに、「私たちのメンバーである諸団体が運営する診療所を通じて、安全な中絶手術のほか不全流産やPPHの治療を受ける依頼者の数は増えており、彼女たちが、ミソプロストールは利用可能で入手しやすいままであるべきというさらなるエビデンスとなっています」と述べました。
「快適なオフィスで座りながら混乱をきたすのは結構ですが、パキスタン現地の実情は全く異なっています」アーサンはこう述べています。「私たちが働いている状況は、かなりの制約を受けているのです・・・気温が高いうえに停電が長い(そのため冷蔵できない)ことを忘れないでください。」