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2015-04-10
ソース(記事原文):血液がんジャーナル
ソラフェニブ投与で、補体調節タンパク質の発現が減少し、リツキシマブとオファツムマブの有効性が向上
血液がんジャーナル(2015年4月10日) ― 編集者への手紙 ― 引用:医学誌「血液がんジャーナル(Blood Cancer Journal)」(2015) ― オンライン版
慢性リンパ性白血病の治療は大きな進歩をみせているものの、未だ根治的な治療は存在せず、有効性を向上させるための新たな治療法が早急に必要とされる。免疫化学療法における抗CD20モノクローナル抗体は、慢性リンパ性白血病患者で臨床活性を示すも、やや限られた有効性しか得られていない。そこで、標的治療と免疫療法の併用が、抗腫瘍効果を増強するための有望な戦略となる可能性がある。これまで複数の前臨床試験において、経口ソラフェニブに対する慢性リンパ性白血病細胞の感受性が報告されており、慢性リンパ性白血病の治療薬として有力な選択肢となり得ることが示唆されている。ソラフェニブは多くの膜結合型キナーゼ及び細胞質基質キナーゼ(BRAF、c-Raf、血管内皮増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、fms様チロシンキナーゼ3、c-Kit)の活性を標的とするものである。ソラフェニブはB細胞腫瘍の増殖停止及び細胞死を誘発するとの報告がある。慢性リンパ性白血病におけるソラフェニブの抗腫瘍効果は、間質細胞からの生存促進シグナルによって失われることはなく、ソラフェニブ治療で薬剤耐性が克服される可能性のあることがうかがえる。
現在、500件を超える臨床試験でソラフェニブが検討されており、その大半が固形腫瘍やB細胞悪性腫瘍におけるものである。最近、ホジキンリンパ腫患者においてペリホシン(AKT/ホスホイノシチド3キナーゼ阻害薬)とソラフェニブの併用で有望な抗腫瘍効果を得られることが示されている。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者及び難治性B細胞リンパ腫患者を対象とした第II相試験で、ソラフェニブに対する良好な忍容性が明らかにされた。さらに、慢性リンパ性白血病患者におけるソラフェニブの効果を評価するため、第I/II相臨床試験が着手されている。
数多くの前臨床試験及び臨床試験にてソラフェニブを含む併用療法が慢性リンパ性白血病の治療に有益となり得ることが裏付けられていることを加味して、今回の研究では、リンパ腫/白血病細胞株及び原発性慢性リンパ性白血病の検体において、抗CD20モノクローナル抗体(mAbs)が抗腫瘍効果に及ぼすソラフェニブの影響を評価している。その結果、ソラフェニブが抗CD20mAbsの抗腫瘍効果を増強することが確認されている。これは膜結合型の補体調節タンパク質(mCRPs)の減少による可能性が高い。
標準的MTT(3-[4,5]-ジメチルチアゾール-2-yl-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)細胞毒性試験を用いた我々の基礎実験において、ラジ細胞、ラモス細胞、又はダウディ細胞(バーキットリンパ腫)とDoHH2細胞(濾胞性リンパ腫)を、ソラフェニブで48時間プレインキュベーション(前保温)すると、リツキシマブの補体依存性細胞障害作用(CDC)誘発能力が有意に増強されるという結果が得られている。また、C5b-9内ネオエピトープを認識する抗体を用いたフローサイトメトリー試験を行ったところ、ソラフェニブでプレインキュベートしたラジ細胞において取り込み膜侵襲複合体(MAC)の増強が示されている。リツキシマブ耐性の慢性リンパ性白血病細胞(MEC-1)において、ソラフェニブは、リツキシマブを介する補体依存性細胞障害作用(CDC)を増強できない一方で、補体依存性細胞障害作用を強く誘発することが報告されている別の抗CD20mAbであるオファツムマブによって誘発される補体依存性細胞障害作用に関しては効果的に増強することができる。
また、抗CD20mAbsは抗体依存性細胞傷害(ADCC)を活性化することから、我々はソラフェニブがナチュラルキラー(NK)細胞に及ぼす影響を確かめることにした。NK細胞活性に対するソラフェニブの免疫調節作用を報告した前臨床試験の結果は、議論の余地があり、決定的なものではない。例えば、ソラフェニブは、古典的なマクロファージの極性化を回復させることにより、肝細胞癌の微小環境を変化させ、NK細胞の活性化を誘発することを示した。さらに、ソラフェニブは、主要組織適合性クラスI関連鎖A細胞外ドメインの分断を阻害することにより、肝細胞癌細胞のNK細胞機能への感受性を高めた。生体内(in vivo)ヒト肝癌異種移植モデルにおいて、ソラフェニブは、ヒト抗グリピカン3抗体と併用した場合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対して相加作用を示した。その一方で、ソラフェニブは、NK細胞に対する抑制効果を有し、NK細胞増殖及び機能に直接作用することも報告されている。これはホスホイノシチド3キナーゼ及び細胞外シグナル制御キナーゼのシグナル伝達経路を阻害することによるものである。後者の報告と合致して、我々の試験でもソラフェニブ存在下でNK細胞及び標的細胞をリツキシマブで4時間培養するモデルにおいて、CD107a動員を測定するADCC測定法(抗体依存性細胞傷害アッセイ)でNK細胞機能の抑制が認められている。ただし、より臨床的関連性のあるモデルも用いた。具体的には、標的ラジ細胞とエフェクター細胞(NK細胞)の両方をソラフェニブで48時間プレインキュベートし、さらにソラフェニブ存在下、リツキシマブで4時間混合培養したモデルである。このモデルでは、ソラフェニブはリツキシマブを介する抗体依存性細胞傷害に影響しない。つまり、ソラフェニブは、NK細胞活性を阻害すると同時に、NK細胞による細胞死に対する標的腫瘍細胞の感受性を高める可能性のあることが示されている。標的癌細胞とエフェクター細胞(NK細胞)との間の複雑な相互作用に及ぼすソラフェニブの影響を詳しく特定するには、さらなる研究が必要とされるのは明らかである。
増強補体依存性細胞障害作用のメカニズムを詳しく特定するため、CD20と補体依存性細胞障害作用を調節することで知られる他のB細胞膜タンパク質の発現量を測定することにした。フローサイトメトリー(流動細胞計測法)にて、ラジ細胞及びMEC-1細胞におけるCD20細胞表面量の有意な増加と、ラジ細胞へのリツキシマブの結合増加が明らかとなっている(データ未発表)。同時に、ソラフェニブで、CD46、CD55、CD59を含むmCRPの細胞表面量が、用量依存的に有意に減少するという結果が得られている。また、ソラフェニブで48時間プレインキュベートした原発腫瘍検体22個の1セットにおいて、CD46、CD55、CD59の細胞表面量の有意な減少が確認されている。その一方で、ソラフェニブで培養した原発性慢性リンパ性白血病細胞において、CD20細胞表面量とCD19、CD37、CD38などの抗原量は、ほぼ変わっていない。連続した9個の原発性慢性リンパ性白血病検体において、ソラフェニブがO-CDCを有意に増強させている(1 μg/mL及び10?μg/mL)。総合的に、ソラフェニブはmCRPを有意に減少させ、この作用が抗CD20 mAbsによる補体依存性細胞障害作用に対する腫瘍細胞の感受性を高めるのに十分であることが証明されている。
ソラフェニブは、複数の腫瘍細胞株において、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)のリン酸化を阻害し、STAT3シグナル伝達を遮断することが報告されている。一部の生体内(in vitro)試験で、STAT3の恒常的リン酸化は、慢性リンパ性白血病の特徴であるとともに、この白血病の治療標的として考慮されることが示唆されている。ソラフェニブは、Raf-1と受容体型チロシンキナーゼ(血管内皮増殖因子受容体、血小板由来増殖因子受容体、c-Kitなど)を標的とし、これらのチロシンキナーゼを収束点とするSTAT3活性を抑制する。これらの結果と一致して、ソラフェニブで48時間培養したラジ細胞において、STAT3リン酸(チロシン705)の用量依存的阻害が認められる。注目すべき点として、CD46プロモーターはSTAT3コンセンサス結合部位12を含み、CD46及びCD55の両プロモーターはSTAT3転写因子に結合することが分かった。また、CD55とCD59のプロモーターについて解析したところ、複数の推定STAT3結合部位が見つかった。細胞の転写解析にて、ラジ細胞及び原発性慢性リンパ性白血病細胞におけるmCRPのmRNA量は、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査で測定時、ソラフェニブで培養しても変化しないことが明らかにされた点はやや意外であった。ソラフェニブで誘発されるSTAT3を介する効果は、他の非転写機構によって遂行される可能性がある。STAT3は、転写活性とは独立して、ホスファチジルイノシトール3キナーゼとI型インターフェロン受容体との間の相互作用を促進するための足場タンパク質の役割を果たすことが既に示されている。
mCRPの減少がpSTAT3阻害に起因するのかどうかを判断するために、強力なSTAT3抑制活性を保持する新規Raf-1欠損ソラフェニブ類似体SC-1のmCRP量への影響について評価した。SC-1はMEC-1細胞のCD46、CD55、CD59量を用量依存的に減少させる。重要な点として、mCRPの減少は、R-CDC及びO-CDCに対するMEC-1細胞の感受性増加と比例することが挙げられる。総合的に、これらの結果は、STAT3がmCRP量の制御に関与している可能性のあることを示している。ただし、この現象のメカニズムを十分に解明するには、さらなる研究が必要とされる。
古典的な補体カスケードの活性化は、複数の非抱合型抗体医薬の治療効果に関与する。例えば、未処理全血測定法において、オファツムマブの活性は、完全に補体依存的であり、CD55及びCD59の遮断によってさらに強まることが示されている。また、補体依存性細胞障害作用の誘発はアレムツズマブの作用に重要である。また、トラスツズマブ単独では補体依存性細胞障害作用を誘発しないが、ペルツズマブとの併用では補体依存的に腫瘍細胞を死滅させる。腫瘍細胞はmCRPを過剰発現させるが、mAbによる補体依存性細胞障害作用を増強させるためには、補体阻害薬の下方制御あるいは中和が提案される。別の治療候補として、薬剤によるmCRP量の下方制御があり、臨床的意義を有するものと考えられる。
多くの生体内(in vitro)試験において、単剤としてのソラフェニブは、慢性リンパ性白血病細胞において、間質細胞由来の生存支持因子の存在下であっても、強力な細胞死促進活性を示している。今回の生体内(in vitro)試験は、ソラフェニブを抗CD20mAbsと併用すると抗腫瘍効果が増強することを示しており、このことからmAbを介する補体依存性細胞障害作用に対する腫瘍細胞の感受性を増加させるのにソラフェニブは有望な戦略であるほか、慢性リンパ性白血病における新たな治療選択肢としてソラフェニブの使用が支持されることが示されている。