フロメックス・エヌ点眼薬5mlはステロイドと抗生物質を配合した点眼薬で、結膜炎などの眼の炎症やアレルギー症状の治療以外に、手術後の感染症予防目的にも使用されます。
炎症は、外から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原菌を体外に排出するために必要な生体防御反応です。特に眼においては、眼に侵入した抗原に対する免疫応答を積極的に抑制し、炎症をできる限り抑えることで眼の微細構造を保護するように働く「免疫特権」という特殊な性質があります。これにより、眼はほかの臓器よりも炎症が生じにくく、万一生じた場合でも組織への損傷を最小限にとどめながら自然治癒することが多いとされています。
この免疫特権は、ほかにも脳や生殖器官など高次元の生命活動に必要な臓器にだけに備わっている臓器機能温存のための炎症制御機構です。つまり眼の機能を失うことは高等動物にとって高度の生命活動の存続が危ぶまれることであり、さらに角膜内皮や網膜などは生体内で再生しないため、このように眼に対しても免疫特権があると考えられています。
ところがこの眼の免疫特権が一旦破られてしまうと、その後は自己免疫や感染に関連した内眼炎が発生しやすくなり、またその炎症は重症で治りにくいことが証明されています。
この炎症を治療する薬がフロメックス・エヌ点眼薬5mlです。
フロメックス・エヌ点眼薬5mlの有効成分のひとつであるフルオロメトロンはコルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)で、炎症の誘因となるヒスタミンやプロスタグランジンの合成を阻害し、また炎症によるはれ、線維素沈着、毛細血管拡張、白血球遊走、食作用活性、毛細血管増殖、線維芽細胞の増殖、コラーゲン沈着、瘢痕形成などを抑える働きを持っています。
さらに臨床試験において、ほかの点眼薬に使用されているステロイドであるデキサメタゾン0.1%を使用して治療した人と、フルオロメトロン0.1%を使用して治療した人では、フルオロメトロンの方が、デキタメタゾンよりも眼圧を上昇させる傾向が低いことが報告されています。
またもうひとつの有効成分であるネオマイシンは、黄色ブドウ球菌、大腸菌、インフルエンザ属、クレブシエラ/エンテロバクター属、ナイセリア属、プロテウス属、コリネバクテリウム属などさまざまなグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して抗菌効果を発揮する抗生物質です。
細菌が生きるために必要なたんぱく質を作るリボゾームという物質にクロラムフェニコールが結合し、細菌がたんぱく質の合成ができないように働きかけることで細菌の増殖を妨げ(静菌作用)、その活動を抑えます。
このように炎症の原因となる物質の合成と細菌増殖の2つを抑制する働きにより、フロメックス・エヌ点眼薬5mlは、主にネオマイシンに感性の感染性結膜炎や前眼部の炎症に対して効率よく働きかけて治療効果を発揮するほか、手術前後の感染予防にも使用されます。