TMP300mgは、主に尿路感染症の予防や治療に使用される抗生物質の一種です。
尿路感染症は、尿の通り道である腎臓、ぼうこう、尿管、尿道などの尿路に細菌が感染し、炎症を起こした状態です。炎症が起こる場所により上部尿路感染および下部尿路感染に分けられ、上部尿路感染は腎盂(じんう)腎炎などの感染、下部尿路感染は、ぼうこう炎、尿道炎、前立腺炎などが含まれます。
感染や炎症の主な原因として、男性では陰茎の先端部、女性では外陰部にある尿道の開口部などの尿の出口からの細菌やウイルス、真菌の逆行が挙げられますが、そのほかにも尿管結石や糖尿病などにより、細菌が血流から腎臓に入ることで発症する場合もあります。
女性の場合、男性と比較して尿道が圧倒的に短いため、細菌による感染が男性の約50倍という統計があり、また加齢により前立腺肥大を患う人が増えることから、高齢者では男性の割合も増えていきます。
感染や炎症は、細菌が増殖することで進行しますが、この増殖は細胞分裂により行なわれます。
細胞分裂は、細胞が自分とまったく同じコピーを次々と作り出していくことで、1つの細胞が2つまたはそれ以上に分かれる現象です。そのコピーの原本となるのがDNA(遺伝子)ですが、この細胞の分裂、成長、DNAの形成や修正の作用に深く関わり、細菌増殖の過程に欠かせない重要な物質のひとつが葉酸です。
葉酸は核酸の成分であるプリン核やチミンの合成に不可欠な酵素の補酵素として働いているため、葉酸が不足すると細胞分裂や成長をはじめ、正確なDNAをつくり出すことができなくなります。 またDNAは、活性酵素などの影響で同じ遺伝情報を持つ細胞の生成を妨げられることがあり、間違った遺伝情報が伝わってしまうことがあります。その場合、酵素がその間違った部分に作用し、正しく修正するように働きかけますが、この酵素に大きな影響を与えるのも葉酸です。
この葉酸の合成を阻害し、抗菌効果を発揮するのがTMP300mgの有効成分であるトリメトプリムです。トリメトプリムは、ジヒドロ葉酸からテトラヒドラ葉酸への還元過程を抑制して葉酸の活性化を阻害することで細胞の葉酸合成を阻害します。
葉酸は細菌に代謝に必要不可欠であり、ほとんどの細菌は葉酸を自分自身で合成することができますが、外部環境から取り込むことはできません。そのため、トリメトプリムにより葉酸の合成を阻害された細菌は、それ以上は増殖することができず、やがて死滅します。