リシノプリル5mgは高血圧症治療および、ジギタリス製剤、利尿剤などの基礎治療剤では効果が現われなかった慢性心不全(軽度-中等度)の治療薬です。
高血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際の圧力が基準値よりも高い状態のことを言い、めまい、動悸、頭痛、肩こりといった症状が現われますが、特にこれらは高血圧特有の症状ではないため、症状だけを見て高血圧と判断することはできません。高血圧をそのままにしておくと血管や臓器に損傷が起こり、脳卒中、心臓病、腎臓病などを誘発するおそれも出てきます。
高血圧の8割は原因不明とされ、そのうち約4割が遺伝、ほかに生活習慣が深く関わっているとされています。肥満、過労、睡眠不足などは特に高血圧を引き起こしやすく、さらに日本人の場合はその食習慣から塩分を多く摂り過ぎる傾向にあり、これもまた高血圧に結びついていると考えられています。
一方、慢性心不全は、心臓の機能が低下するため全身に充分な酸素が送られないことで血液の流れが滞り、動悸、息切れ、呼吸困難、むくみなどの症状が現われる状態です。頻脈性不整脈、徐脈性不整脈などが慢性心不全を引き起こしますが、高血圧もその原因のひとつとなっています。
血圧を下げるための薬の作用はそのアプローチにより何種類かに分類されます。中でもリシノプリル5mgの主成分であるリシノプリルは、腎臓から分泌される昇圧物質であるアンジオテンシンIIの産生を阻害して血圧を下げるACE阻害薬に属します。降圧効果は中程度と言われていますが、心臓、腎臓などの臓器によい影響を及ぼし、心筋梗塞、心不全、糖尿病を合併している人に向いています。また腎血管性高血圧の人にも効果的ですが、左右両側の腎動脈の狭窄がある人、極度に腎機能が悪化している人には不向きです。血管拡張物質であるブラジキニンを分解する酵素の働きも阻害してしまうためにブラジキニンが増え、これが原因となってせきに関与する受容体を刺激するため、痰を伴わない空せきが副作用として出ることがあります。
高血圧治療の根本は血圧を下げることではなく、将来起こる可能性のある心臓や血管の病気のリスクを下げることであるため、通常、高血圧の治療は「生活習慣の改善」と「薬による治療」が併用されます。また高血圧の治療は、既に糖尿病、高脂血症、肥満などの心血管病のリスクを持っている人に対しても有益な効果をもたらします。