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2013-08-31

ソース(記事原文):臨床内分泌学ニュース

強力なスタチンを高用量で使用すると認知症リスクが低下

臨床内分泌学ニュース(2013年8月31日)― ナジームS.ミラー(NASEEM S. MILLER)著

【アムステルダム】―台湾で行われた後向き観察研究によると、アトルバスタチンやロスバスタチンなどの強力スタチンを総等価用量として高用量服用した高齢者は、認知症の発症リスクが3分の1に減少していたという。

欧州心臓学会議(European Society of Cardiology)年次総会でこの研究を発表したチン‐チェ・リン博士(Dr. Tin-Tse Lin)は、このメカニズムはスタチンのコレステロール低下作用、抗血栓作用、抗炎症作用によるのではと語った。ただし、あまり処方されないロバスタチンに関しては、高用量での使用と認知症発症との間に正の相関が認められた。

専門家らによれば、この研究結果は「スタチンと認知症」というパズルに新たな1ピースを加えるものであり、スタチン系薬の使用でみられる、いわゆる「ブレインフォグ(認知機能障害)」に対する懸念を多少は和らげるかもしれないという。

デトロイトにあるウェイン州立大学(Wayne State University)の心臓学科長、キム・ウィリアムズ博士(Dr. Kim Williams Sr.)は、この研究について、「私たちがよく使う強力なスタチンで認知症になるという明確な証拠はなかったことから、大きな安心感を与えてくれるものでした」と話す。その一方で、ロバスタチンのような比較的古いスタチンには懸念が残るとも話した。ウィリアムズ博士は、米国心臓病学会(American College of Cardiology)の副学会長である。彼はこの研究には参加していない。

2012年に米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)は、スタチン系薬の添付文書に、この薬の使用で一時的な記憶喪失や錯乱が起こるおそれがあるとの警告を追加した。一方、レビュー調査(2012年)をはじめとする複数の研究は、スタチン系薬と認知障害の間に因果関係や決定的な関連性は認められないとしている。

今回の研究では、研究者らは台湾の全民健康保険(National Health Insurance)加入者の中から100万人をランダムに抽出した。次に、65歳以上で1997年と1998年の病歴に認知症が含まれていない5万8千人近くの患者を特定した。彼らの追跡調査期間は平均4.5年であった。

スタチン系薬の使用量は、平均一日等価用量、および総等価用量(全追跡期間にわたる)で算出し、それぞれ低用量、中用量、高用量の三分位に分けた。

主要評価項目は、初老期認知症および老年性認知症の新たな診断とした。血管性認知症は除外した。

5500人をやや上回る患者が認知症を発症した。残りの5万2千人は対照群とした。

結果から、認知症の調整ハザード比は、スタチンの総等価用量および一日等価用量の増加と有意な負の相関関係にあることが分かった。総等価用量の場合、対照群と比べたハザード比は0.77(低用量)、0.63(中用量)、0.33(高用量)となり、差はすべて有意であった。平均一日等価用量についても、対照群と比べたハザード比はそれぞれ0.62、0.70、0.42となり、差はやはり有意であった。

異なる年齢、性別、心血管リスクのサブグループでも、スタチンの予防効果が揺らぐことはなく、統計的に強い傾向があったという。

台湾の新竹(Hsin-Chu)にある国立台湾大学附属病院(National Taiwan University Hospital)のリン博士は、この研究結果がほかの民族にも当てはまるのかは不明だと話す。

また、コレステロール代謝障害が脳血管疾患の発生率上昇につながることや、コレステロール値が上昇すると強い炎症状態となり神経変性が起こることを理由に、「スタチンが認知症のリスク低下を促進すると言っても過言ではないと思います」と、仮定的に見解を示した。

この研究に対するコメンテーターを務めた、オスロ大学(University of Oslo)(ノルウェー)のテリエR.ペダーセン教授(Prof. Terje R. Pedersen)は、「スタチンがアルツハイマー病の進行に影響を与えるというのは信じがたいが、ひどいアテローム動脈硬化を予防すれば認知症も予防できると考えるのは理にかなっている気がします」と語った。

ウィリアムズ博士のまとめによれば、今回の研究は「比較的強力なスタチンを高用量で使用すれば有益性は最大になるという考えに、新たな一面を加えるものです。この考えは心血管リスクに対してはすでに確かな事実となっており、いまや認知症予防にも当てはまるということです」。

リン博士とウィリアムズ博士は、利益相反に関して開示する情報はなかった。ペダーセン教授は、メルク(Merck)およびファイザー(Pfizer)から研究助成金を、メルク、アストラゼネカ(AstraZeneca)、ファイザー、アムジェン(Amgen)からコンサルティング料を、メルク、ファイザー、アストラゼネカ、ロシュ(Roche)、ノバルティス(Novartis)、アムジェン、グラクソ・スミスクライン(GlaxoSmithKline)から講演謝礼金を受け取っている。


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