尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマとはヒトパピローマウイルス、又はヒト乳頭腫ウイルス(HPV)というウイルスによって性器や肛門の周りにイボ(良性腫瘍)ができる性感染症のひとつです。

ウイルスとは細胞を持たない極小の病原体で単独ではエネルギー代謝ができません。

そのため自己単体では増殖ができず、他の生物の細胞内に寄生してのみ増殖します。

パピローマウイルスは現在までに数百種類が発見され、哺乳類や鳥類、さらに亀などの両生類に良性の腫瘍(イボ)を発生させるウイルスですが、その特性は感染対象とする生物種属を超えて感染させる能力がないというところにあります。

つまり人間に対して感染力を持つパピローマウイルスはヒトパピローマウイルス(HPV)のみであり、ウシパピローマウイルスやイヌパピローマウイルスは人間に対しての感染力はありません。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は現在までに約100種が確認されています。尖圭コンジローマを発症するヒトパピローマウイルスはその中の6型と11型です。

またヒトパピローマウイルスのうち16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82、(26、53、66)型は女性の子宮頸口癌を誘発する可能性が高いタイプとされています。

 

◆感染状況◆

尖圭コンジローマは日本では性器クラミジア、淋病、性器ヘルペスに続き感染数の多い性病といわれその感染数は年々増加傾向にあります。

世代的にみると20~30代の比較的若い世代に多い感染症で、主に性行為によって皮膚や粘膜の微細な傷から感染します。

潜伏期間が8カ月(平均2.8カ月)にも及ぶものもあるため、潜伏期間中の性行為によって知らず知らずのうちに感染が広められてしまうことも感染数の増加につながっています。

尖圭コンジローマは感染率の高い性病で、一回の性交で感染する率は50%以上であると言われています。

感染による粘膜、外性器、子宮内膜に病変(イボ)があると、そこからHIVや他の性感染症に感染する率も高くなると言われています。

感染源であるヒトパピローマウイルス(HPV)の中には女性の子宮頸口癌を誘発するものもあるので感染が疑われる場合はすぐに検査をする必要があります。

 

◆感染の進行◆

性器や肛門の周りにイボが発生します。

男性器における主な発生部位は亀頭、環状溝付近、包皮の内側、外側などで、女性器の場合は膣内や子宮頸口内に発生する場合もあります。

イボは非対照性に発生し、大きさは直径が数ミリのものから数センチのものまでとまちまちです。

色は白、ピンク、褐色、黒などとさまざまで、形も乳頭のようなもの、鶏のトサカのようなもの、カリフラワーのようなものがと不揃いです。

病状が進むにつれてイボは大きくなり、数も数個から数十個へと増えていきます。

痛みや痒みなどはほとんどないとされていますが、悪化して炎症を起こしていたりすると痛みや痒みを感じる場合もあります。

また女性においてはおりものが増えたり、性交後に出血がみられる場合もあります。

またオーラルセックスやアナルセックスを介して口内や肛門内へ感染することもあります。

 

◆潜伏期間◆

約3週間~8カ月(平均2.8カ月)

 

◆尖圭コンジローマの症状◆

女性

男性

イボ(良性腫瘍)
・数mm~数㎝
・白、ピンク、褐色など
・乳頭型、トサカ型、
カリフラワー型
・数個~数十個

外性器部周囲

イボ(良性腫瘍)
・数mm~数㎝
・白、ピンク、褐色など
・乳頭型、トサカ型、
カリフラワー型
・数個~数十個

亀頭(先端部)

尿道口

環状溝周囲

肛門内、肛門周囲

包皮内外

陰嚢、会陰
(肛門と陰嚢の間)

子宮頸管

尿道口

痛みや痒み

肛門内、肛門周囲

おりものの増加

痛みや痒み

性交後の出血

 

 

◆尖圭コンジローマと紛らわしいイボ◆

生殖器にできるイボが全て尖圭コンジローマとは限りません。

中でも男性器によくみられるフォアダイス(女性に発症することも有り)や真珠様陰茎小丘疹、女性器にみられる膣前庭乳頭症などは性行為で感染する性感染症ではなく、生理的な現象であるため必ずしも治療が必要なものではありません。

しかし扁片コンジローマ、ボーエン様丘疹、伝染性軟属腫は性行為によって感染する性感染症のイボであるので、病状に適した治療が必要となります。

フォアダイスとは直径が1~3mm程の小さな痛みを伴わない発疹で、男性器の陰茎(女性器の大小陰唇)に発生し、成人男性のおよそ65%に認められる生理的症状です。

これらは異所性の皮脂腺でもともと毛根にある脂腺が毛根の無い部位に現れたものになります。痛みや痒みはありません。

真珠様陰茎小丘疹は環状溝周囲に黄白色の小さな脂肪の塊が真珠の首飾り状に一列に並んで現れ、成人男性のおよそ20%に認められる生理的症状です。痒みを伴うことが多い症状です。

膣前庭乳頭症は真珠様陰茎小球疹の女性版と言われています。

膣前庭という膣からクリトリスにかけての小陰唇の内側や膣の内部に周囲と同色系の直径1mmくらいの発疹ができ、痛みや痒みを伴います。

原因ははっきりとはわかっていませんが、皮膚や粘膜の増殖によって発生すると考えられています。

ボーエン様丘疹症は尖圭コンジローマを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の16型によって引き起こされる性感染症の一つです。

ボーエン様丘疹症は性器に黒褐色の一見肉腫に見える良性の丘疹が散在します。

痛みや痒みの様な症状はなく自然に消滅する場合も少なくはないと言われています。

しかしヒトパピローマウイルス16型は発がん性が高いとされるタイプであるため、浸潤すると癌を誘発する場合もあるといわれています。

扁片コンジローマは梅毒による病変で、梅毒の第二期に現れる特徴で、まず肛門や性器周囲、及び乳房下やわきの下などに平たく盛り上がった丘疹が形成されます。

症状が進行すると潰瘍状となり悪臭を伴うようになります。

伝染性軟属腫は性器に限らず全身の皮膚に発症しますが、性行為によって性器や肛門周囲に発生する、平均2~5mmの水イボです。

 

◆尖圭コンジローマの治療法◆

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスです。

ウイルスは特定の細胞の中に寄生して細胞のエネルギー代謝を使って増殖する微小体です。

このようなウイルスの特殊性からウイルスのみを破壊、或いは排除させることは非常に難しく、現時点では特定のウイルスの細胞内で増殖(自己複製)する一過程を阻害、或いは人体の自然免疫機能によるウイルスの増加の停止、或いは体内からの除去に限られています。

尖圭コンジローマを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)はいったん感染すると体から除去することはできません。

そのため元来の治療法はイボの凍結、焼却、及びレーザや器具による切除など、患部から取り除くものが一般的でした。

しかしこのような外科療法では治療に痛みを伴ったり、傷が残ってしまうというデメリットがありました。

くすりやさんで取り扱っている『アルダラ/アルダーラクリーム 5%』や『イミキアドクリーム 5%』は有効成分をイミキモドとする免疫反応調整機能をもつ抗ウイルス薬です。

これらは日本の持田製薬が販売している『ベセルナクリーム 5%』と同じものになります。

イミキモドはウイルスの侵入を認識し、免疫機能を稼働させるTLR7(Toll様受容体)と相互作用することにより、細胞からのインターフェロンαというサイトカインというたんぱく質の産生を誘導します。

このインターフェロンαはヒトパピローマウイルスがその増殖に必要不可欠なたんぱく質を細胞内で合成することを阻害し、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス作用があるといわれています。

 

また、欧米で尖圭コンジローマ治療の第一選択として使用されている『コンディリン 0.5%』の有効成分であるポドフィリンは、細胞分裂中期の細胞核の有糸分裂を阻害します。

この作用によって感染されたウイルス性の核が複製されなくなり、ウイルスの増殖が停止します。

ただし、ポドフィリンはウイルス感染している細胞そのものを攻撃する細胞毒性を持つ強い成分ですので、使用の際には細心の注意を払って使用するようにしてください。

 

表面上のイボを取り除くことはできますが、ウイルスを体から取り除くことはできません。

その為再発を繰り返すことも多く、その都度辛抱強い治療が必要となります。

治療後3カ月のうちに再発する割合は約25%といわれています。

尖圭コンジローマは感染力が強く、パートナー両者の治療を同時に行うことも必要です。