ルシファックス400は、主に非侵襲性大腸菌による旅行者下痢症をはじめ、過敏性腸症候群やクローン病に対する治療薬として使用される抗生物質です。
旅行者下痢症は、海外に旅行した際に、旅行先に存在している免疫のない微生物の影響により下痢、嘔吐、吐き気などの症状が現われる病気で、「種々の微生物による感染性腸炎の総称で、24時間以内に4回以上または8時間以内に3回以上の下痢で、少なくとも吐き気、嘔吐、胃部せん痛、発熱、便意促迫、腹痛またはしぶり腹、粘液便または血便の症状のうち、ひとつを伴う下痢」と定義されています。
原因となる微生物の主な種類には、毒素原性大腸菌、細菌性赤痢、サルモネラ、カンピロバクター、腸管付着性大腸菌などの細菌をはじめ、ロタウイルス、ノロウイルスなどのウイルス、そしてランブル鞭毛虫、赤痢アメーバなどの寄生虫があり、食べ物や飲み物から感染することが多いようです。特に保健衛生事情の悪い発展途上国を訪れるほど病気にかかる確率は高くなります。軽度であればほとんどの場合はすぐに改善しますが、中には重症化して長期の下痢、腹痛、発熱、血便などを伴う場合もあります。
過敏性腸症候群は、特に大腸や小腸には異常が認められないにも関わらず、下痢や便秘などの便通異常と腹痛、腹部不快感などの腹部症状が続く病気です。ストレスや寝不足、緊張、腸管運動機能異常、炎症などが原因で起こることが多いようですが、詳しい原因はわかっていません。
またクローン病は、体のあらゆる消化管内に腫瘍を形成し、粘膜が炎症を起こしたり、腸管内腔が狭くなる原因不明の慢性炎症疾患です。腹痛、下痢、発熱、血便、肛門痛などの症状が現われては治まり、この状態を繰り返します。病気が進行すると腸管、関節などに合併症を引き起こすこともあります。
ルシファックス400の有効成分であるリファキシミンは、リファマイシンに関連した半合成抗生物質で、細菌のRNA合成を阻害することで細菌の増殖を抑え、殺菌作用を発揮する薬です。口から服用しても腸からは吸収されず、消化管内だけで効力を発揮するため、主に消化管内の局所感染治療に使用されています。また血液中への吸収が極めて低く、全身性の副作用がほとんど現われないという特長も持っています。
さらに最近の研究発表によると、リファキシミンは、肝硬変の合併症で、重篤な意識障害を引き起こす肝性脳症に対する治療効果があることが発見され、既にその効果も実証されています。またさらなる臨床試験の結果、治療だけでなく肝性脳症の予防に対しても少なからずの効果がある、とのデータも公表されているほか、ルシファックス400は、過敏性腸症候群やクローン病の治療への適応が大きく期待されています。