リチウム・カーボネート250mgは 炭酸リチウムを有効成分とし、双極性障害(躁うつ病)の治療に用いられる薬です。
双極性障害(躁うつ病)とは、躁状態とうつ状態という、相反する気分が周期的に繰り返される気分障害で、統合失調症と並び精神の二大疾患とされる精神病の中で最もよくみられる、深刻で慢性的な病気の一種です。
通常は鬱状態の期間と躁状態の期間が交互に入れ替わりますが、二つの状態が混在する場合もあります。
原因ははっきりとは解明されていませんが、身体的及び生理的負担が脳の機能に支障をきたすことから発症するのではないかと考えられています。
躁状態とは爽快気分、観念逸脱、精神運動興奮などに特徴される精神状態です。
一般に躁状態は数日間のうちに急速に発症し、人によって数週間から数カ月継続するとされています。
気分が異様に高まった状態が持続し、エネルギーに満ち溢れ、精力的に活動するようになります。睡眠時間は減少しますがそれを苦にすることもなく、食欲、性欲とも向上します。
頭の回転が速くなり、アイデアが次々と浮かぶようになるため注意力が散漫になります。
しかし自分の状態に対する認識がないため、自分には特別な才能がある、といった誇大的な妄想を抱くようにもなる場合もあります。
また社会的な危険性を考えることがなくなるため、振る舞いが無謀になり、過度な浪費、逸脱した性行為に至ることが多く、対人関係上のトラブルなどから社会的地位を失ってしまうこともあります。
極端な場合には、せん妄、朦朧と言った無意味な興奮状態の継続によって死に至る場合もあります。
躁状態は本人の自覚なしに周囲に多大な損害を与える可能性がある為、時には強制的な入院による治療が必要となることも有ります。
一方うつ状態は気分、意欲、思考の低下がみられる症状です。
数日から数週間にかけてゆっくりと発症し、数年間から場合によっては数十年も継続することがあります。
症状としては落ち込み、不安、焦りといった気分の変化が現れ、無気力状態になり、引きこもりがちになります。
喜びや楽しみと言ったことを感じることがなくなり、集中力の低下や判断力が鈍くなることから自分に自信が持てなくなり、物事を悲観的にとらえるようになります。
さらにこのような気分の変化によって睡眠障害、食欲減退、体重減少、倦怠感といった体の不調を伴うのが特徴です。
重症になると無力感や失望感から「死にたい」といった自殺願望を抱く場合もあり、実際に治療がなされなかった場合は約15%の人が自殺によって命をたってしまうと言われています。
そのためうつ状態の人において自殺願望が現れた場合には自殺のリスクが低くなるまでの入院、監視が必要になることもあります。
双極性障害には1型と2型に区分されます。
双極性障害1型とは、最低でも1度は躁状態に陥った期間がある場合を指し、双極性障害2型は、1型と症状は似ているものの、1型と比べて躁状態が軽い軽躁状態に陥った場合を指します。
軽躁状態の場合は、1型に見られるような危険な行為を行う可能性が低いため、入院などの処置がとられることは通常ありません。
双極性障害の発症は20代が多いとされていますが、発症率は約0.6-0.9%と多くありません。
しかし適切な治療を受けなければ再発を繰り返し、その頻度も年齢と共に増加するといわれています。
双極性障害の治療は気分安定薬の使用が一般的です。
気分安定薬には患者の精神状態を適正な状態に保ち、躁状態やうつ状態の再発を防ぐ作用があるとされています。
さらに長期使用によって患者の6割において再発を予防することが可能であるとされ、予防薬としても使用されています。
リチウム・カーボネート250mgの有効成分である炭酸リチウムが双極性障害の治療にどの様に作用するかはまだ明らかにされていません。
しかし、炭酸リチウムによる神経内そして筋肉内のナトリウムの輸送変更や、刺激を受けたニューロンからのセロトニンとドーパミン放出の阻害などが抗躁うつ作用をもたらしていると考えられています。