ムコペイン・ジェル20%はエステル型の局所麻酔薬で、虫さされ、草木による刺し傷、軽い擦り傷などで起こる痛みやかゆみのほか、外性器または肛門外部のかゆみなどの症状を緩和します。
痛みやかゆみは、いずれも細胞で作られた物質が電気信号に変わり、それが脳に伝えられることでそれぞれの感覚が生じます。例えば痛みの場合、ケガややけどなどによって皮膚細胞が破壊されると、その細胞にカリウムイオン、セロトニン、アセチルコリンなどの発痛物質が形成されます。これらの物質が皮膚、皮下組織、筋肉の腱やじん帯、骨膜、椎間板の一部などに存在する自由神経終末と呼ばれる痛みを伝える神経に達すると、今度は電気信号に変化してそれが感覚神経(求心性神経線維)に伝わり、中枢神経に到達します。中枢神経に伝わった興奮は、脊髄と視床を経由した後に大脳皮質の体性感覚野に届き、この痛みの信号がどこから来たかにより該当する神経細胞が反応し、痛みとしての感覚が生まれます。
一方で、かゆみが起こる仕組みについてはまだ詳しく解明されていませんが、その過程にはヒスタミンと呼ばれる物質が関係していると考えられています。このヒスタミンは痛みやかゆみを感じる知覚神経に作用する物質で、皮膚に存在する脂肪細胞から遊離された後に受容器と結合することで電気信号となり、それが脳に伝わることでかゆみを感じるとされています。さらにこの刺激は逆行性に神経終末にも伝わり、神経ペプチドと呼ばれる神経伝達物質を放出させますが、この神経ペプチドは肥満細胞を刺激するため、ここでもヒスタミンを遊離させます。かゆい部分をかくことによって余計にかゆくなるという現象は、これが原因で起こります。
このヒスタミンはかゆみだけでなく、痛みの原因となる神経を同時に刺激する働きも持っています。さらに痛みを引き起こすブラジキニンやカプサイシンなどの物質は、かゆみに関わる神経を活動させるために、痛みとかゆみは異なる症状ではあっても、複雑に関係し合っていると言われています。
これらの痛みやかゆみ症状を緩和する働きを持つのがムコペイン・ジェル20%です。有効成分のベンゾカインは別名、アミノ安息香酸エチルとも呼ばれており、神経節における伝達および神経-筋接合部での伝達を阻害します。この働きにより、それぞれの感覚がそこから先に伝わらなくなるために、痛みやかゆみの症状が緩和します。またベンゾカインには刺激作用がなく、組織を腐食するおそれがないという特長があります。
なお、ベンゾカインはその麻酔作用により、早漏防止の外用薬に使用されていることもありますが、ムコペイン・ジェル20%にはその適用はありません。