ミドリアシル点眼薬0.5%は抗コリン性の点眼薬で、瞳孔を拡げて眼の調節機能をまひさせる働きを持つため、主に毛様体筋まひ性屈折検査や眼底検査の際に使用されます。
毛様体は、眼球の虹彩と脈絡膜の中間にある部分で、近いところを見るときは、この中にある毛様体筋と呼ばれる筋肉が弛緩して毛様体小帯が緩み、水晶体はその弾力性によって厚くなります。その反対に遠いところを見るときは、毛様体筋が縮み、毛様体小帯が緊張するために水晶体は薄くなりピントを調節します。このように目に入ってきた光は角膜で強く内側に屈折、さらに水晶体で再び屈折されて、網膜に倒立した像を結びますが、その視覚データを記号として読み取った脳は、学習と経験により正立像として解釈します。
これらの目の屈折状態を決める要素には、角膜、房水、水晶体、硝子体の屈折力、水晶体の位置および眼球の長さ(眼軸長)などがあります。このうち最も重要なのは、角膜の屈折力、水晶体の屈折力と位置、眼軸長の三つで、これらの相互関係によって正視、近視、遠視の別ができ、また角膜のゆがみにより乱視が起こります。
この目の屈折状態は一生を通じて変化します。例えば、赤ん坊の目は大多数が遠視ですが、成長するにつれて近視の方に傾き、成人になると約半数が近視になります。さらに老人になると、調節力が減退すると同時に老人遠視が多くなるようです。
ところが何らかの原因で毛様体筋がまひすると、これらの調節がうまく効かなくなり、さまざまな弊害が現れてきます。これを調べるのが毛様体筋まひ性屈折検査です。
また眼底検査は、網膜剥離や眼底出血、緑内障などの目の病気を調べる目的で、瞳孔の奥にある眼底を眼底カメラや眼底鏡という器具を用いて観察し、眼底の血管、網膜、視神経を調べる検査のことです。毛様体筋は勝手に不安定に動くため、安静時の屈折状態を測定するのが難しく、これらの検査を行なう際には、しばしばこの眼の調節機能をまひさせる薬が使用されます。
ミドリアシル点眼薬0.5%の有効成分であるトロピカミドは、副交感神経終末においてアセチルコリンと競合的に拮抗して神経伝達を遮断する副交感神経を遮断薬で、瞳孔括約筋を弛緩させることにより散瞳を生じさせ、また毛様体筋の緊張を抑制して調節まひを示すことで、水晶体、硝子体液、網膜などの検査を行ないやすくします。
トロピカミドは、点眼後15-30分程度で散瞳がおき、またその作用は2時間程度持続しますが、いずれも同様の作用を持つアトロピンと比較して短いため、眼科検査の際に使用する点眼薬として適していると言えます。