ベノキン(ベノクイン)・クリーム20%は、皮膚におけるメラニン細胞の色素形成を強力に阻害する作用を持つ外用薬です。通常は、全身に多発するタイプ(汎発型)の尋常性白斑の人で、その面積が広く一般的な治療に反応しない場合に、美容的な目的で正常部の色素脱色に使用されます。
別名・シロナマズとも呼ばれる難治性皮膚病のひとつである尋常性白斑は、突然皮膚の色素が抜けて部分的に白くなる病気です。後天的に発症することが多く、子どもから高齢者まで年齢を問わずに発現します。遺伝との関係性や他人への感染はないとされていますが、甲状腺疾患、悪性貧血、糖尿病、委縮性胃炎など内臓の病気との合併があるとも言われています。 また、その見た目の問題から、発症した人の精神面に大きな影響を与える疾患のひとつでもあります。
白斑の約70%は、身体の両側に対称性に白斑が認められる汎発型です。最初は1つか2つの小さな白斑が身体に出現することからはじまり、その後は生涯的に白斑が少しずつ増えて行きます。一般に、ひざやひじ、手足の指の関節、ベルトや下着などで締め付けられる下腹部や腰など、押されたりこすれたりする部分の発症が多く、左右対称に現われるのが特徴です。
残りの30%は神経分節型で、神経の通り道に沿って片側性に発症します。子どもや若い成人に現われることが多く、30歳を過ぎてからの発症や、体中に白斑が広がることはほとんどありません。進行は汎発性に比べて速いですが、6割の人では1年以内に進行が止まり、3年以上経てばそれ以上広がることはほとんどないとされています。しかし、子どもの場合は自然治癒が期待できますが、成人の場合は進行が止まった状態のまま一生持続します。
いずれのタイプもメラニン色素をつくるメラノサイトという細胞が破壊されたり、活動が停止することで発症します。しかし、その詳しい原因についてはまだわかっておらず、自己抗体の色素細胞に対する攻撃、神経の異常、皮膚における活性酵素を除去する機能の低下などにより色素細胞が消失したり壊れることが原因ではないかと考えられています。
尋常性白斑の場合、病気により脱色した部位と正常な部位がまだらに存在しているのが一般的です。そのため、全体の皮膚の色を統一するために、白く変色せずに残った皮膚を脱色させる作用を持つのがベノキン(ベノクイン)・クリーム20%です。
その作用機序はまだ解明されていませんが、有効成分のモノベンゾンがメラニン形成細胞からメラニンの排出を減少させ、メラニン形成細胞を破壊して不可逆的な脱色を起こすためと考えられています。また効果出現までに通常1-4ヵ月程度かかります。
なお、モノベンゾンでいったん脱色した皮膚の色素は元には戻りません。さらにベノキン(ベノクイン)・クリーム20%の治療後は、生涯皮膚が敏感になるため、外出などで日光に当たる機会がある場合は必ず日焼け止めを使用してください。また、シミを消すといったような美肌・美白ケアとしての適用はないため、使用には十分注意をしてください。
海外の医薬品の使用における注意事項(厚生労働省)