ベネース10mgは、有効性・安全性の高い新しいACE阻害剤を目指して開発された、塩酸ベナゼプリルを主成分とするアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤で、高血圧症の治療薬です。
アンジオテンシンは生理活性物質で、アンジオテンシンI-IVの4種類に分類されています。
そのうちアンジオテンシンIIは強い血管収縮作用による昇圧作用のほか、副腎からのあるアルドステロンの分泌を促進する作用を持っています。
このアルドステロンは、腎の遠位尿細管に作用してナトリウムや水の再吸収を促進するするため結果として循環血液量が増加することから、血圧がさらに上昇させられます。
これら昇圧作用によって血圧が正常範囲であるとされる10mmHg/90mmHgを超えた状態が高血圧症です。
その約9割が特定な発症原因によるものではなく、食生活、運動不足、肥満、ストレスなどの要因によるものとされ、俗に言う生活習慣病の一つとみなされる本態性高血圧症であるとされています。
高血圧症の恐ろしいところは、血圧が高い状態が長期に渡って継続することによって心臓や血管にかかる過度の負担から心筋梗塞、狭心症、大動脈瘤などの心血管疾患を引き起こすところにあります。
アンジオテンシンIIは不活性型のアンジオテンシンIの活性型です。
肝臓で生成されたアンシノーゲンという物質が腎臓から分泌される酵素のレニンによってアンジオテンシンIに変換され、さらに体内循環中に主に肺や腎臓の血管内皮細胞に存在するペプチド末端加水分解酵素であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)によって変換させられたものとなります。
変換されたアンジオテンシンIIは血管平滑筋細胞上にあるアンジオテンシンII受容体に結合することにより血管平滑筋収縮作用、副腎からのアルドステロン分泌促進によるナトリウムの貯留、体液量増加作用、交感神経活動亢進作用などで血圧を上昇させる作用を発揮します。
またアンジオテンシン変換酵素(ACE)は生理活性物質であるブラジキニンを分解に関わるキニナーゼIIでもあります。
ブラジキニンは血漿中のタンパク質であるキニノーゲンから生成され、血管平滑筋を弛緩による血管を拡張作用や、細尿管におけるナトリウムや水の排泄作用での利尿作用によって降圧効果をもたらしますが、分解されることによって減少し、その降圧作用が減弱してしまいます。
ベネース10mgはアンジオテンシン変換酵素(ACE)の働きを阻害する薬です。
有効成分の塩酸ベナゼプリルは体内に吸収された後、加水分解により活性代謝物であるベナゼプリラートに速やかに変換され、主に血漿中または組織中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)を特異的に阻害し、アンジオテンシンIからアンジオテンシンIIへの変換を抑制します。
同時にブラジキニンが分解されるのを抑制する作用もあるため、昇圧因子の抑制と降圧因子の活性化という二つの作用によって強力な降圧作用をもたらします。
最近の研究発表では、塩酸ベナゼプリルとカルシウム拮抗薬であるアムロジピンを併用することで、塩酸ベナゼプリルと利尿薬であるヒドロクロロチアジドとの併用よりも心血管疾患の発症が15%減り、また被験者の76%以上が血圧管理に成功したとの結果が出ています。この結果を踏まえ、塩酸ベナゼプリルは今後の高血圧管理に貢献することが大いに期待されています。