プロザックは、塩酸フルオキセチンを有効成分としたSSRI型抗うつ剤です。アメリカではイーライリリー社から発売されています。
プロザックの適用としては、うつ病・うつ状態の治療、強迫性障害の治療、神経性拒食症、パニック障害の治療などが対象になっています。
プロザックは最初のSSRI系の薬として1998年に発売され、イーライリリー社の大々的な宣伝効果、さらに「性格が明るくなる(性格改善)」、「頭がすっきりし回転が速くなる」、「自信が出る」といった「夢の薬」幻想の一人歩きも伴い、爆発的な広がりをみせました。
医師たちも、比較的軽度のうつ病患者に対しても積極的に用いたことから、世界中で2,000万人以上といわれる人が服用していると言われていますが、日本ではいまだに承認されていません。
なお、「性格が明るくなる(性格改善)」、「頭がすっきりし回転が速くなる」「自信が出る」といった効果を裏付ける個人の体験談は山のようにありますが、それらはあくまでも主観的な報告であり、それを裏付ける臨床試験は行なわれていないため、その効果の程は定かではありません。
プロザックの有効成分である塩酸フルオキセチンはSSRIと呼ばれる、選択的セロトニン再取り込み阻害薬ですが、これは脳内におけるセロトニンの再吸収を阻害することで、うつ病を治療する薬です。
うつ状態にある人は、脳内のシナプス間隙にあるセロトニンの濃度が少ないと考えられており、その状況を改善するために何らかの方法でセロトニン濃度を高める必要があります。
SSRIは、セロトニンの受容体に選択的に作用し、再取り込みを阻害することでセロトニン濃度を高めます。
この第三世代の抗うつ薬といわれるプロザックを含むSSRI系の薬は選択的に作用するために、三環系・四環系と呼ばれる第一・第二世代の抗うつ剤よりも副作用が少ないことが最も大きなメリットで、誰でも使いやすい抗うつ剤として、世界中で注目を集めました。
その後の研究によって月経前症候群についても適用が追加され、サラフェムという別の薬でも発売されています。
プロザックにおいては、自殺企図・自殺が副作用として報告されていますが、販売元であるイーライリリーは因果関係を否定しており、当局も注意喚起・警告・慎重投与に留めるに至っています。
元来うつ病患者には高い確率で自殺願望が見られますが、それを増幅させる作用があるかどうかは、解明に至っていません(臨床試験上「自殺者が1人いる」というだけでは、明確な副作用として記載することはできません)。
ですが、うつ病の治療において慎重な観察・薬物使用は当たり前のことであるため、自己判断をせず、必ず医師の診断を受けた上で使用することが、うつ病の治癒には大切です。