パンゾップ・リリーフ40mgは、胃酸の生産を抑制する働きを持つプロトンポンプ阻害剤で、逆流性食道炎、食道逆流疾患、消化不良をはじめ、十二指腸潰瘍、胃潰瘍や、NSAID(非ステロイド抗炎症薬)からの胃や十二指腸の保護、ゾリンジャー・エリソン症候群(十二指腸、すい臓、胆管にできた悪性腫瘍による過剰なガストリン分泌)の治療などにも使用されるほか、抗生物質と併用することでヘリコバクター・ピロリ菌の除菌補助にも使われる薬です。
胃液は、食べ物を消化するほか、感染症の原因となる細菌やウイルスを殺したり、一部の有害物質を分解するなどの生体防御システムとしての役割も持つ強酸性の体液で、特に空腹時では、金属をも溶かすほど非常に高い酸性になると言われています。主に胃酸、ペプシノーゲン、粘液の3つの成分から成り立ち、1回の食事で約0.5リットル、1日平均で2リットルが胃壁の粘膜にある胃腺から分泌されます。
胃が健康な状態では、粘液が胃粘膜の表面に粘液層という保護膜をつくり、ここからアルカリ成分を分泌して胃酸の塩酸を中和させるため、胃粘膜が傷つくことはありません。ところがストレスやアルコール、不規則な食生活、病気などが原因でこのバランスが崩れると、それにより損傷した胃粘膜に胃液が入り込んで胃痛や胃潰瘍などを引き起こします。
またピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)と呼ばれる細菌が粘液層の中で繁殖して粘液層を破壊し、胃の表面に炎症を起こすことも胃痛の原因のひとつとして考えられています。
このほか、胃の働きの低下をはじめ、消化の悪い食べ物、胃に負担をかける食べ方などにより、胃の中にいつまでも食べ物が溜まった状態となり、食欲不振や膨満感を感じる胃もたれや、飲食後に食道のチリチリ感、胃の内容物の逆流感、胸に鈍い痛みを感じるなどの症状が現れる胸やけなどの胃腸障害も起こることがあります。
胃酸は、胃壁細胞からプロトンと呼ばれる水素イオンをポンプのように胃の中に汲み出し、胃腔内の塩素イオンと結合させることで胃液が酸性に変わり、生成されますが、この働きに関与しているのがプロトンポンプと言う酵素です。胃液中の水素イオンの濃度が高ければ高いほど胃液の酸性度は高くなり、pHが低くなります。
パンゾップ・リリーフ40mgはこの過程を阻害し、胃酸分泌を減少させるプロトンポンプ阻害剤です。プロトンポンプ阻害剤は、プロトンポンプ酵素に結びつくことでその働きを不活性化させて水素イオンの生成を減少させ、その結果として胃壁から送り出される水素イオンの量が減るために胃酸の生成が抑制されます。
特にパンゾップ・リリーフ40mgの有効成分であるパントプラゾールは、潰瘍の治癒に対してもすぐれた効果を発揮し、服用後に消化性潰瘍の痛みを和らげるだけでなく、胃の中のpHも改善することが実証されています。さらにパントプラゾールの働きにより胃内のpHが上昇し、胃粘液層に棲息するヘリコバクター・ピロリが定常期から増殖期に移行するため、細菌感染治療に使用される抗生物質であるアモキシシリンに対する感受性が亢進するほか、クラリスロマイシンの活性とそれに伴う胃粘膜層濃度の上昇が起こります。
そのためパンゾップ・リリーフ40mgは胃腸障害の治療以外にも、アモキシシリン水和物およびクラリスロマイシンを用いたヘリコバクター・ピロリ除菌の補助薬として使用されることもあります。