塩酸バラシクロビルは、1987年にアメリカのグラクソ・スミスクライン社において開発された抗ウイルス剤で、経口服用後速やかに消化管から吸収された後、ヌクレシオ類似体DNAポリマーゼ阻害剤であるアシクロビルとL-バリンに加水分解されるプロドラッグです。
特に単純ヘルペスウイルスに対して強力な抗ウイルス作用を示すほか、性器ヘルペスの再発抑制や水痘・帯状疱疹ウイルスの治療にも有効とされています。
単純疱疹については海外65ヵ国以上で、また帯状疱疹においては85ヵ国以上で承認されている薬です。
単純ヘルペスウイルスはHSV-1とHSV-2に分類されます。
一般にHSV-1は主に口唇ヘルペスを生じさせ、ヘルペス口内炎、ヘルペス角膜炎、単純ヘルペス脳炎の原因となり、HSV-2は主に性器ヘルペス、新生児ヘルペス、ヘルペス髄膜炎の原因となるといわれています。
しかし近年ではオーラルセックスなどでHSV-1が性器ヘルペスの原因となるなど、いずれも絶対的なものではありません。
単純ヘルペスウイルスに感染すると、皮膚や粘膜などに小さな水疱がまとまって出現し、痛みや発熱などの症状を伴うこともあります。
いったんウイルスに感染すると、例え症状が治まったとしてもウイルス自体は三叉神経節、脊髄神経節といった神経節の中に潜伏し続け、免疫機能の低下が引き金となって再活性化します。
水痘・帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス科に属し、水痘と帯状疱疹を引き起こすウイルスで、HSV-3とも呼ばれています。
水痘とは俗に言う「水ぼうそう」のことで強力な感染力を持っており、主に空気感染、飛沫感染などによって感染します。
2週間程度の潜伏期間の後に発症し、3日目ごろにピークを迎え、1週間程度で治ります。
しかし治癒した後もウイルスは神経根に潜伏し、ストレスや心労、老化、日光などの刺激によって免疫力が低下すると水痘ウイルスが再び活性化され、帯状疱疹として現われることがあります。
単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスを根絶する抗ウイルス剤は現在のところ存在しませんが、治療をすることで不快感を和らげ、症状の発生期間を短縮することができるとされています。
バルシビル1000mgの有効成分塩酸バラシクロビルはヘルペスウイルス感染細胞内でリン酸化、活性化されてヌクレシオ類似体アシクロビル三リン酸となります。
このアシクロビル三リン酸はDNAを構成する塩基の一つであるグアニンの前駆体であるグアノシンに非常によく似た構成を持った物質ですが、DNA鎖が連鎖するための部位を持っていません。
ウイルスのDNA合成時に競合的にDNA鎖に取り込まれ、その後のウイルスDNA鎖の結合、延長を不可能にすることによってウイルスDNAの合成を不可能にし、ウイルスの増殖を抑制します。
塩酸バラシクロビルの活性体であるアシクロビル三リン酸はウイルスDNAの合成を阻害することによってその効力を発揮するため、神経節に潜伏しているウイルスにおける効力はないとされています。
治療の開始は早いほど効果を発揮するとされ、口唇ヘルプスや性器ヘルペスの急性期及び再発期においては症状が出始めたと感じたらすぐに治療を開始することが大切です。
また一定の期間であれば性器ヘルペスの再発や二次感染を抑制する効力もあるとされています。