ニルスタット経口用滴剤100,000 I.U.は、口腔内のカンジダ感染専用の治療薬です。
カンジダは、口中、消化管、膣などの粘膜や皮膚の湿った部分に普通に生息している常在菌の真菌で、普段は免疫機能が過度の増殖を防いでいるため、健康な人の場合では発症することがほとんどありません。しかし風邪、疲労、ストレスなどによる体力低下をはじめ、ステロイドや抗生物質の使用による抵抗力低下のほか、血液疾患、AIDSなどの免疫不全症、糖尿病などの基礎疾患などが原因となってカンジダが異常に増殖し、感染症を引き起こすことがあります。
中でも、口腔内に常在している主にカンジダ・アルビカンスというカンジダ菌により引き起こされるのが口腔カンジダ症です。特に感染に対する抵抗力が弱い乳幼児や高齢者に多く見られ、乳幼児の場合は母親からの直接感染や、消毒が不充分な哺乳ビンや乳首からうつることが多く、また高齢者では義歯や入れ歯の手入れの怠りによるカンジダ菌の増殖が主な発症原因となるようです。
口腔内カンジダは、その経過や症状の相違により大きく4種類に分けられます。その多くは、頬、舌、唇の粘膜に起こる偽膜性カンジダ症で、主症状として口の中に白い苔状のものが現われます。ぬぐうと取れ、その下の粘膜は赤くなっており、放っておくと口全体に広がりますが、痛みはあまりなく、熱などの全身症状もほとんどありません。
一方、粘膜が赤くなる萎縮性カンジダ症は、ヒリヒリ感や灼熱感を伴うこともあり、急性では抗菌薬、ステロイド薬の長期服用による口腔内の常在菌のバランスが崩れたときに、また慢性の場合は義歯性口内炎とも呼ばれ、入れ歯の下の粘膜に多く生じます。
そして、これらのカンジダ症が長引いて慢性になると、白い膜が粘膜に固着して粘膜上皮層自体が斑状に厚く、硬くなりますが、このような状態を肥厚性カンジダ症と呼びます。
これらの口腔カンジダの治療に使用されるのがニルスタット経口用滴剤100,000 I.U.です。有効成分のナイスタチンはポリエン系抗生物質のひとつで、菌類の細胞膜を合成しているエルゴステロールに結合して膜に小さな孔をあけ、細胞内物質の流出と細胞外物質の流入を引き起こすことにより殺菌的に作用します。腎毒性が強いため局所的に使用されます。