ニトロゲシック軟膏0.2%は、主に切れ痔(裂肛)の症状を緩和し、治療するための軟膏です。
切れ痔(裂肛)は、イボ痔(痔核)、アナ痔(痔ろう)に次ぐ肛門3大疾患のひとつで、肛門の内側にできる切り傷のことです。肛門の縁から奥へ1.5cmくらいの肛門上皮と呼ばれる部分(皮膚と直腸粘膜の間にある肛門管)にできやすく、この部分は直腸に比べて血行が悪く、弾力性に乏しいため痛みに敏感な部分です。また裂肛は肛門の後方(背中側)にできることが多いようです。排便時または排便直後の肛門の痛みを主症状とし、さらに裂傷による少量の出血も伴います。
その主な原因は便秘で、硬い便や太い便が出る際に肛門を傷つけることで起こりますが、下痢や軟便が原因となることもあります。また慢性的な炎症などにより、肛門周囲の皮膚に柔軟性がなくなり、裂けやすくなることでも裂肛になります。
一度裂肛を経験してしまうと、排便時の痛みがトラウマとなって排便を我慢する傾向が強くなります。そのために便が硬くなり、再び排便時に肛門が切れるという悪循環を繰り返すことが多く、慢性化することもあります。すると、その切れた部分が治ろうとする際に周囲に粘膜を引き寄せることで肛門が狭くなり、排便が困難になる肛門狭窄を引き起こします。肛門狭窄になると肛門がさらに切れやすくなるだけでなく、肛門ポリープや見張りイボなどの突起ができたり、さらに症状が悪化して化膿すると痔ろうからガンを誘発することもあります。
裂肛の治療は、まずその原因となる便秘や下痢を解消することが大切です。例え裂肛が治ったとしても、便秘によって便が硬くなると再発しかねません。そのためには食物繊維と水分を多く摂取するなど食生活を改善し、便の状態を正常に戻すことが第一条件です。
また最近では、内肛門括約筋の緊張亢進が肛門管内圧の上昇と局所の血流低下をもたらすために、肛門上皮に裂肛が生じるとも考えられています。そのため、薬物により肛門括約筋の緊張を取り除く方法が行なわれますが、その際に使用される成分がニトログリセリンであり、ニトロゲシック軟膏0.2%の有効成分です。
ニトログリセリンには、内肛門括約筋の収縮を抑制する神経伝達物質である一酸化窒素を供給して肛門管内圧を低下させる作用があり、さらに裂肛部分の血管を拡張し、血流を増やすことで治癒を早め、肛門の括約筋をリラックスさせる効果もあるとされています。
ニトログリセリンによる治療は2-8週間行なわれ、治癒率は50-80%と高い結果が報告されていますが、その反面で約40%の人で頭痛の副作用が起こるという問題もあるようです。