ニゾラールクリーム2%は、白癬(はくせん)、皮膚カンジダ症、癜風(でんぷう)、脂漏性皮膚炎など、主に皮膚真菌症を治療するための塗り薬です。
真菌とはカビの仲間の総称で、核膜(遺伝子を被う膜)を持っているという特徴において細菌とは異なります。自然界だけでなく人体にも分布しており、真菌が原因となるカビ疾患の約90%は、皮膚の表層の角質の中に真菌が入り込んで発症する表在性皮膚真菌症です。その代表的なものは皮膚糸状菌で、皮膚糸状菌はケラチンというたんぱく質を栄養とするため、それが多く含まれる角層、毛、爪などに生息します。
この皮膚糸状菌が原因で起こる皮膚感染症のひとつが白癬です。症状が出る場所によりたむし(体部白癬)、いんきん(股部白癬)、水虫(足白癬)、爪水虫(爪白癬)、しらくも(頭部白癬)などと呼ばれます。 症状はそれぞれに多種多様ですが、一般的には円形・不整形の白みを帯びた輪ができる、皮膚がカサカサになりウロコ状になる、小さい水疱が生じ、かゆみが生じる、などの症状を伴うことが多いようです。 人から人に感染する場合もあれば、ペットや動物との接触によっても移るとされていますが、感染菌自体の感染力はさほど強くなく、空気感染はしません。
カンジダは、口中、消化管、膣などの粘膜や皮膚の湿った部分に普通に生息している常在菌で、酵母など球状のカビである分芽菌という真菌に属しています。通常は免疫機能が過度の増殖を防いでいるため、健康な人の場合では発症することがほとんどありませんが、風邪、疲労、ストレスなどによる体力低下をはじめ、ステロイドや抗生物質の使用による抵抗力低下のほか、血液疾患、AIDSなどの免疫不全症、糖尿病などの基礎疾患などが原因となってカンジダが異常に増殖し、感染症を引き起こすことがあります。感染した部位により症状は異なりますが、主に発疹やびらん、かゆみなどがみられます。
また癜風は、カビの一種である癜風菌に感染することにより、主に胸、背中、腕、頚部などの上半身に黒いシミ(黒色癜風)や、その反対に白い脱色素斑(白色癜風)が現れる疾患です。特に汗をかきやすくなる春から夏にかけて発症や悪化しやすい上に、かゆみや赤みをほとんど伴わないために、発症に気づかない場合も多いようです。外用薬塗布で、2週間ほどで菌は陰性化するケースがほとんどですが、色素の沈着や脱失は長期間残り、また再発率が極めて高い菌でもあります。
脂漏性皮膚炎は、皮脂腺が発達している頭や顔、胸、背中、陰部などに起こりやすい皮膚疾患です。分泌が多くなった皮脂が皮膚表面に留まると、やがて脂漏性皮膚炎・湿疹の原因になる、刺激性のある油分に分解されていきます。男性ホルモンであるアンドロゲンの作用による皮脂の過剰分泌、ビタミンB2やB6の欠乏、ストレスなどが脂漏性皮膚炎の原因であると考えられていますが、最近では真菌の一種であるマラセチアが大きく関係していることが明らかになってきています。
真菌は、細胞分裂を繰り返し、自分自身とまったく同じコピーを作り続けていくことで増殖しますが、その際に細胞膜もそのままコピーされます。この細胞膜は真菌の内部形状を保ち、細胞内の生化学反応系を外部から保護する作用を持つために細胞にとって不可欠なものです。ところが細胞分裂の際にこの細胞膜の合成を阻害し、真菌がこれ以上増殖できないように作用することで抗真菌作用を発揮するのが、ニゾラールクリーム2%の有効成分であるケトコナゾールです。
ケトコナゾールは皮膚真菌症の治療に広く使用されるイミダゾール系の抗真菌薬で、刺激痛などの副作用が比較的少ないのが特長であるほか、炎症を誘発する物質であるロイコトリエンを抑える作用も持つとされている成分です。