禁煙補助薬
禁煙補助薬
禁煙補助薬とは、喫煙者が禁煙を試みた際の体内のニコチン濃度の低下によって生じるニコチン離脱症状を緩和することによって禁煙を成功させる手助けをする薬剤です。
◆日本の喫煙状況◆
日本の成人平均喫煙率は平成21年(2009年)のたばこ産業による「JT全国喫煙者調査」によると男性が39.9%、女性が11.9%、男女合わせたものが24.9%となっています。
また、喫煙率から推計された喫煙人口は男性1,957万人、女性644万人、男女では2,601万人と推定されています。
日本における喫煙率(或いは喫煙者数)は年々減少していますが、世界と比較するといまだに高いとされ、2007年にOECD(経済開発機構)のヘルスデータによると世界の中で5番目に喫煙率が高い国とされています。
◆喫煙による影響◆
たばこの煙にはニコチンだけでなく、タール、一酸化炭素といった様々な発がん物質/発がん促進物質が含まれています。
たばこによる健康被害としては肺がんを始め気管支炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、咳や痰といった呼吸器症状などが代表的なものとしてあげられます。
また、妊娠中の女性の喫煙は流産、早産、低体重児、胎児の呼吸器発達への影響などの危険性と関連づけられています。
その他にも胃・十二指腸潰瘍、歯周病、心筋梗塞や狭心症、肌荒れ、咽頭がん・喉頭がん・口腔がんなどのさまざまながんなどの危険性が高くなる上、余命が短くなることも明らかになっています。
◆ニコチン依存症と喫煙◆
喫煙をしている人のうち過去に喫煙を試みた人の6-7割が挫折した経験を持っているとの報告があるように、喫煙者が禁煙を成功させる事は非常に困難であることが知られています。
かつては禁煙の失敗はたばこに対する心理的依存が原因とされ、本人の意思の弱さによるものと考えられてきました。
しかし近年の研究によって禁煙の難しさはたばこへの心理的依存だけでなく、身体的依存によるものでもあるということが解明されています。
このたばこへの身体的依存がニコチン依存症と呼ばれるものです。
喫煙によって肺に吸い込まれたニコチンはわずか数秒で脳に達し、脳の快楽中枢に働きかけるドパミンを過剰に分泌させるようになります。
しかし、体内に取り込まれたニコチンが分解すると、ニコチン濃度が低下することから、それに伴ってドパミンの分泌量が減少し快楽中枢が刺激されなくなります。
そうするといらいら、集中力の低下、落ち着きのなさ、不眠、怒りやすくなる、不快、といったニコチン離脱症状と呼ばれる症状が現れて体がニコチンを渇望するようになり、これらのニコチン離脱症状を改善手段として喫煙が繰り返されることとなります。
これがたばこの身体的依存であるニコチン依存症と呼ばれるものです。
従って禁煙には、習慣などからくるたばこへの心理的な依存だけでなく、身体的な依存であるニコチン依存症を断ち切ることが重要とされています。
◆禁煙補助薬◆
このようなニコチン依存症、及びその離脱症状に着眼し、喫煙以外の方法でその離脱症状を抑え、禁煙の補助をするのが禁煙補助薬です。
禁煙補助薬は大きく分けてパッチやガムなどでニコチンを補充するニコチン代替療法とニコチンを含まない経口禁煙補助薬に大別されます。
ニコチンを補充するタイプの禁煙補助薬として代表的なのが「ニコレット」です。
ニコチンを含まない経口禁煙補助薬として代表的なのか「チャンピックス」です。
その他にも、FDA(アメリカの食品医薬品局)により認可され販売されている、ブプロピオン/バプロピオンを有効成分とするニコチンを含まない経口禁煙補助薬がありますが、日本ではまだ認可されていません。
最近(2010年)このブプロピオン/バプロピオンと塩酸ネルトレキソン/ナルトレキソンの組み合わせにより、非常に効果的なダイエット効果があることが分かり、この二つの混合剤がコントレイブという名前で発売されることになり、注目されています。