ドキソビッド400mgは、キサンチン誘導体のホスホジエステラーゼ阻害薬で、気管支ぜんそくや慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用される薬です。
気管支ぜんそくは、アレルギーの原因となるアレルゲンや刺激に対する細胞の免疫機能によって引き起こされる可逆性気道閉塞性で、症状が現れない「平常時」と、呼吸困難、喘鳴、胸が締め付けられるなどの症状を伴う「発作時」の2種類の状態があります。近年の研究により、気管支喘息の発作の原因がアレルゲン吸入反応による慢性的な気道炎症によるものであることが判明したため、喘息の治療は平常時における気道過敏性による過剰炎症の抑制と、その抑制状態を維持していくことに重点が置かれるようになってきています。
一方COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、起床時のせきを伴った粘液性の痰を主症状とする「慢性気管支炎」や、有害物質により肺の組織が破壊されることで機能低下を起こし、肺が膨らみ、横隔膜や心臓を圧迫する「肺気腫」などの総称で、「持続性あるいは反復性の痰を伴うせきが少なくとも連続して過去2年以上、毎年3ヵ月以上」続いた状態です。中年以降の喫煙者の約20%に発症が認められ、また喫煙者が発症する確率は非喫煙者の6倍にもなるとされていることから、別名「タバコ病」とも呼ばれています。
これらの気管支ぜんそくやCOPDでは、呼吸の際に空気が通過する通り道である気道が狭くなるためにさまざまな症状が現われますが、これはアレルゲンや喫煙が原因となって、気道の平滑筋が収縮することで起こるとされています。この平滑筋に関与しているのがcMAP(環状アデノシン一リン酸)およびcGMP(環状グアノチン一リン酸)です。cMAPは、細胞に対するホルモンなどの信号物質の指令を受け取って細胞内で合成され、細胞内信号伝達物質として働きます。またcGMPは、イオンチャネルの伝導性、グリコーゲン分解、細胞のアポトーシスなどを調整するほか、脳血管拡張、抗血小板作用(血が固まりにくくする作用)、平滑筋の弛緩にも関わっていますが、これらの物質はホスホジエステラーゼという酵素によって分解されてしまうため、その結果として血管や平滑筋が収縮します。
ドキソビッド400mgは、この酵素による分解を受けないようすることで、これらの物質を増やして気管支を拡げる薬です。ホスホジエステラーゼ阻害薬である有効成分のドキソフィリンは、長期管理薬および発作治療薬のいずれにも使用されているキサンチン系薬で、炎症と気管支筋の緊張を抑えて拡張し、痰を出しやすくするほか、腹式呼吸の際に横隔膜を上手に動かすなどの作用を持ち、β刺激薬よりも一般的な飲み薬とされています。
キサンチン系薬ではテオフィリンが特に有名で、ドキソフィリンはこのテオフィリンとほぼ同じように働きますが、アデノシン受容体に対して親和性を示さないために、心臓がドキドキする、不眠といった副作用が少ないと考えられています。
さらにドキソフィリンは、血小板活性化因子(PAF)誘因性気管支収縮および強力な気管支収縮作用を持つトロンボキサンA2(TXA2)の生成を阻害するほか、胸膜滲出と気管支や血管を収縮させるロイコトリエンC4(LTC4)物質の生成も阻害するとの報告があります。このメチルキサンチン誘因性炎症の阻害により、ドキソフィリンはぜんそく治療において有効であると考えられています。