ディベニリン10mgはアドレナリン作動性効果遮断薬で、主に褐色細胞腫にまつわる血圧管理や前立腺肥大症に伴う排尿困難の治療に使用されています。
アドレナリン作動性神経とはノルアドレナリン、アドレナリンを伝達物質とする神経を指し、その作動はノルアドレナリン、アドレナリンがそれらの応答を担っているアドレナリン受容体に結合することによって初めて発揮されます。
アドレナリン受容体はα1、α2、β受容体に大別されますが、そのうち交感神経性反応に関与しているのは心臓血管系や下部尿路などに広く分布しているα1受容体であるとされ、この受容体の過度な刺激による活性化は心拍数の上昇、血管の収縮による血圧の上昇といった作用による高血圧、動悸、頭痛、発熱などの原因となり、やがては心臓病や脳卒中など重体な病気の引き金となるとされています。
ディベニリン10mgの有効成分の塩酸フェノキシベンザミンは、血管平滑筋細胞膜上に存在しているアドレナリンα1、α2受容体に不可逆的に結合し、これらの受容体を遮断します。
アドレナリンα1受容体の遮断は副腎髄質から分泌されるアドレナリンや、交感神経終末から放出されるノルアドレナリンが受容体に結合することを阻害し、血管平滑筋の弛緩作用による血圧降下作用をもたらします。
さらに四肢の細動脈を拡張させる作用もあることから、発作的な動脈の収縮により四肢末梢が蒼白化するレイノー症候群や、血液中の酸素が現象することで皮膚や粘膜が青紫家色を帯びる肢端チアノーゼ症などの末梢血管障害にも有効とされています。
α2受容体は交感神経終末から放出されるノルアドレナリンの量を抑制する役割を果たしていますが、この受容体が遮断されると放出されるノルアドレナリンが増えて頻脈を引き起こすことがあります。
そのため塩酸フェノキシベンザミンは血圧管理において臨床的な応用が少ないとされ、現在では褐色細胞腫によって高くなった血圧を下げる働きをする薬として、褐色細胞腫摘出手術前に頻繁に使用されています。
褐色細胞腫とは、主に副腎髄質や腹腔動脈沿い、腹腔内、骨盤腔後壁などの交感神経系の傍神経節に存在するクロム親和性細胞から、ごくまれに発生する腫瘍です。
副腎は上腹部の背中側に位置する左右の腎臓の上部に1つずつ、合計2つ存在しているホルモン産生の器官です。
副腎は内側の髄質と外側の皮質からなり、髄質からは交感神経の機能を増強するアドレナリン、ノルアドレナリン、皮質からはコルチコイドステロイドを始めとした副腎皮質ホルモンといった体の機能にとって大切なホルモンをつくり出しています。
通常、褐色細胞腫は副腎の片側に発生しますが、約10%の確率で両側にできることもあり、その他にも心臓やぼうこうの周囲などに発生することもあります。
年齢を問わず男女ともに発現し、その原因は遺伝によると言われていますが、まれに遺伝以外で発生するケースもあり、その原因はよくわかっていません。
クロム親和性細胞から発生する腫瘍のほとんどは良性腫瘍で、副腎内で増殖する細胞腫ががん性である確率は約5%、それ以外の場所で発生した褐色細胞腫ではそれ以上とされています。またほかの部位に転移することはありません。
褐色細胞腫は非常に小さいものですが、この腫瘍は副腎髄質からアドレナリンα1受容体に結合することによってその昇圧作用を増強するアドレナリンなどのカテコールアミン(カテコラミン)と称されるホルモンを過剰に分泌させるため、重症の高血圧、過度な発汗、動悸などといった症状が現れます。
褐色細胞腫の治療は、通常は腫瘍の摘出手術が第一選択となります。
手術前の状態ではアドレナリンをはじめとしたカテコールアミンが過剰分泌されているため血圧が高くなっていますが、手術後は腫瘍を摘出することで血圧が一気に通常の状態に戻るので、褐色細胞腫の摘出手術は術前の血圧コントロールが非常に大切だとされています。
また、塩酸フェノキシベンザミンが遮断するα1受容体には前立腺平滑筋を収縮させる作用や汗腺から汗を出す作用があるため、この作用を阻害するディベニリン10mgは良性前立腺肥大症や多汗症、わきがの治療に使われることもあります。