ダイトール10mgは、ループ利尿剤と呼ばれる尿排泄を促進する薬で、心臓、腎臓、肝臓の働きが悪くなることで起こるむくみ(浮腫)や、高血圧の治療に使用されます。
むくみは、痛みを伴わないはれのことで、顔や手足などに現われることが多いようです。通常、脚のむくみは長時間同じ姿勢と取り続けたり、長い間歩いたりすることで起こりますが、これは細胞間質液と言われる細胞組織の液体と血液の圧力バランスがくずれ、細胞組織に水分が溜まるのが原因で、夕方に起こる軽いむくみについては特に心配する必要はありません。しかしこれ以外にも心臓病、腎臓病、肝臓病が原因で起こるむくみもあります。
心臓が原因で起こるむくみの大部分は心不全によるものです。心臓は右心系(肺循環)と左心系(全身循環)に分かれており、そのどちらに問題があるかで現われる症状も異なってきます。右側心不全の場合は、足、足首、肝臓、腹部などに体液が溜まるためこれらの部分にむくみが生じますが、余分な体液の量と重力の関係で、例えば立っている場合は足に、寝ている場合は背中など、体液の溜まる場所は変わります。体液の量が多い場合は、腹部や肝臓、胃に溜まることもあります。
左側心不全では、肺の内部に体液が溜まるために肺水腫が起こり、呼吸困難、息切れなどの症状が現われてきます。人によっては心臓喘息を起こし、気管支けいれんや喘鳴が現われることもあり、急性肺浮腫の場合は命にかかわる場合もあります。また左側心不全は、結果的に右心不全も引き起こします。
腎臓病や肝臓病では、血液中のアルブミンなどのたんぱく質が減少する低たんぱく血症が原因でむくみが起こります。腎臓に問題がある場合はたんぱく質が尿中に過剰に排出されることで、また肝臓病ではたんぱく質がうまく合成できなくなるために低たんぱく血症が起こりやすくなります。アルブミンは血中の中に水分を溜める働きをしますが、低たんぱく血症ではこの機能がうまく作用しなくなることで細胞外に水分が流れ出し、むくみが生じます。腎臓や肝臓に問題がある場合では、むくみは主に顔、手足、腹部に現われます。
むくみは水分が体内に溜まることで起こるため、その治療には利尿剤が主に使われます。利尿剤はその作用や機序によりいくつかに分類されますが、ダイトール10mgは強力な水分および電解質の排泄作用を持つループ利尿薬に属します。ループ利尿薬は、尿細管のループ状に曲がっている部分(ヘンレ係蹄上行脚髄質部)に作用して水、ナトリウムの再吸収を阻害することで利尿作用を示す薬で、利尿薬の中ではいちばん作用が強いと言われています。しかしその反面でカリウムを排泄する作用を持つため、高血圧、疲労、筋力低下、抑うつ、便秘などを症状とする低カリウム血症を引き起こす可能性もあります。
しかしダイトール10mgはループ利尿作用に加えて、抗アルドステロン作用(水、ナトリウムの貯留作用を持つアルドステロンの働きを阻害する)に由来するカリウム保持性を併せ持っているため、ほかのループ利尿剤と比べて低カリウム血症を起こしにくいうえに有効性と安全性が高く、さらに食事の影響を受けない、効果の出現が人により均等である、などのすぐれた特長を持っています。
またこの強い利尿作用から、海外ではむくみの治療のほか、高血圧に対する降圧薬としても使用されています。