ゾビラックス・クリーム5%は、単純ヘルペスウイルスが原因で起こる水ぶくれや発疹である単純疱疹や帯状疱疹、水痘(水ぼうそう)の症状を抑えるためのクリームです。
単純ヘルペスは口、唇、目、性器などに液体で満たされた小さな水疱や潰瘍を引き起こすウイルスです。感染力がとても強く、患部の直接的な接触はもちろんのこと、唾液、タオルやコップなどからもうつることがあります。その種類には大きく分けて、主に口唇、顔、角膜に多く発生する1型と、性器に発生する2型があり、いずれも痛がゆさを伴う小さな水ぶくれが複数できた後、それが破れてかさぶたになります。通常は1-2週間で治りますが、子供のうちに感染した場合は軽度な症状が多いのに対し、大人になって初めて感染した場合は重症化することがあります。
初めての感染では症状はほとんど出ないことが多いようですが、ウイルス自体は神経節で潜伏し、定期的に活性化することで再発や再感染を繰り返すだけでなく、最初に感染したのと同じ場所に発現するのが特徴です。再発の原因は、風邪やストレス、老化などによる体力や免疫の低下が引き金となることが多く、また2型の場合では性交による場合がほとんどです。いずれも再発前にうずき、かゆみ、灼熱感や、全身のだるさ、腰痛・下肢のしびれなどの兆候があらわれることもあります。
帯状疱疹もまた、単純ヘルペスによるものです。過去にかかった水痘(水ぼうそう)が知覚神経節に遺伝子の形で潜伏感染し、その後、ウイルスが再び活性化することで発症します。疼痛の起こった部位に皮疹が帯状にあらわれ、場合により神経痛に似た激しい疼痛や知覚異常を伴うこともあります。
これらの病気の原因となる単純ヘルペスウイルスを根絶する抗ウイルス剤は現在のところ存在しませんが、この細胞のDNA(遺伝子)の合成を阻害することで増殖を抑え、ウイルスの活動により起こる症状を改善する薬がゾビラックス・クリーム5%です。
細胞が増殖するためには、その遺伝情報を担っているDNAの複製が必要不可欠で、それにはDNAが持つ二本鎖の構造を一度ほどいて鋳型とし、対となる核酸構成成分を取り込んでつなぐという過程が必要になります。ゾビラックス・クリーム5%の有効成分であるアシクロビルはこの核酸構成成分と似た構造をしているため、ウイルスが間違って取り込んでしまうことによりウイルスは新たなDNA
の複製ができなくなります。その結果、増殖が止まり、症状が治まります。
またDNAの合成にはDNAポリメラーゼと呼ばれる酵素が必要ですが、アシクロビルはヘルペスウイルスのポリメラーゼのみを阻害するので、ほかの細胞には影響をほとんど与えないという特徴があります。
なお、ゾビラックス・クリーム5%の有効成分のアシクロビルは、ヘルペスウイルスの増殖を阻害するため、発症初期に使用することでより高い効果が期待できます。