ゾコン点眼薬0.3%は、真菌によって引き起こされる真菌性角膜炎、アカントアメーバ角膜炎に効果を示すトリアゾール系抗真菌剤点眼薬です。
真菌性角膜炎とは、常在するカビの一種である真菌が、黒目の部分の外側にある薄い透明な組織の角膜についた傷から入り込んで炎症を起こした状態で、主にカンジダ属のカンジダ・アルビカンスと呼ばれる真菌が原因となって起こります。そのほかの起炎菌として多いのは、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラシローシス、カンジダ・グラブラータなどが挙げられます。
カンジダ属は通常は人の結膜から数%程度の頻度で検出され、普段は害を及ぼすことがない菌ですが、コンタクトレンズの使用、抗菌点眼薬および副腎皮質ステロイド点眼薬の使用などによって真菌感染が起こります。また植物の枝で目を突いてしまったとか、土ほこりのついた異物が飛入したといった場合にも発症する事があります。
症状は、涙、めやに、眼痛、充血で、細菌性による角膜炎と非常に似ているために見分けがつきにくいとされていますが、細菌性角膜炎には抗生物質が効くのに対して、真菌性には効果が見られないため、それが発見につながることもあるようです。
アカントアメーバは、アカントアメーバという原虫が角膜に寄生して起こる角膜感染症で、コンタクトレンズの使用者の間で近年非常に増えていると言われています。
アメーバ原虫は、普段は川や土の中にいる小さな原生動物ですが、レンズ装着のままプールや川などで泳いだり、装着したままの睡眠、水道水でのレンズ洗浄など、多くの場合は誤った使用方法が原因となり発症しているようです。実際に、発症者の85-90%がコンタクトレンズ使用者であるというデータもあります。
初期症状としては、めやに、涙、目の痛み、充血があり、そのまま炎症を放置すると、原虫がさらに角膜深部に侵入し、重篤な症状へと進行することで視力が徐々に低下し、最悪の場合は角膜が溶け、失明の可能性もある恐ろしい感染症です。
ゾコン点眼薬0.3%の有効成分であるフルコナゾールは、これら炎症の原因になる真菌・原虫の増殖を阻止し、症状回復に効果を示す点眼薬です。
フルコナゾールが属するトリアゾール系抗真菌剤は、真菌の細胞膜を構成している主成分のエルゴステロールの合成を選択的に阻害し、膜の透過性や機能を障害することにより静菌的に働くほか、血中半減期が長い、体液・組織移行性が高いなどの特徴を持っています。
通常フルコナゾールは抗真菌剤として使用されていますが、アカントアメーバに対する具体的な治療薬が現在の段階ではないために、アカントアメーバ角膜炎の治療薬として使用されています。ただし、真菌性角膜炎やアカントアメーバ角膜炎へのフルコナゾールの使用は、初期段階の症状にのみ有効であるとされており、症状が進行した重篤な症状に対しては点滴療法が適用されるのが一般的です。