シロクサン点眼薬 0.3%は有効成分を塩酸シプロフロキサシンとするニューキノロン系抗菌薬で、角膜潰瘍や、細菌性結膜炎に効力を発揮します。
角膜とは、黒目の部分の外側の厚さおよそ0.7mmの透明な膜で、眼球の形の維持、下界から入ってきた光の屈折など、いわゆるレンズの役割をしています。
この角膜が目の中の異物やコンタクトレンズの誤用、またはさかまつ毛などによって傷つけられると、剥がれた角膜の裏にブドウ球菌、レンサ菌、肺炎桿菌、緑膿菌などの細菌が入り込んで炎症を引き起こし、角膜潰瘍を引き起こします。
また、ヘルペスウィルスによる発症や、ストレス、及び免疫低下による角膜の抵抗力の減弱によっても発症するといわれています。
細菌性角膜潰瘍が発症すると、まず、目の中に異物感と痛みが感じられ、光に過敏になり、涙っぽい目になります。
大抵は数日経つと角膜に白、または灰色っぽい濁り(潰瘍)が生じ、白目の充血や瞼の腫れ、さらには視力に影響を与える場合もあります。
ひどいものでは角膜全体に及ぶ潰瘍や、角膜の裏側に膿が溜まる場合もあります。
さらには、治療遅れによる細菌性角膜潰瘍の進行によって、濁りの残留や、視力障害などの後遺症が残ることもあり、最悪の場合には角膜に孔が開き(角膜穿孔)、失明してしまう場合もあります。
結膜とはまぶたの裏側から白目(強膜)の外側を覆っている透明の上皮で、異物や細菌が目の中に入るのを防いだり、涙液の膜を維持して目を保護する役割があります。
しかし結膜そのものは粘膜であるため、細菌に侵入されやすく、侵入したインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ぶどう球菌、淋菌などによって炎症が引き起こされると結膜炎が発症します。
症状は痒みや、痛み、白眼の充血、白や黄色の膿状の目やになどが一般的です。
細菌性結膜炎は非常に感染力が強いため、目から目へ、或いは人から人へと簡単に感染してしまいます。
そのため、感染している目に触らない、タオルを共用しない、洗濯物は別々にするなどの対策も必要となります。
シロクサン点眼薬 0.3%の有効成分を塩酸シプロフロキサシンは、DNAジャイレースと呼ばれる細菌のDNA合成酵素を阻害することによって抗菌効果を発揮するニューキノロン系抗菌薬です。
DNAジャイレースとは、細菌の独特のDNAトポイソメラーゼ酵素です。
通常DNAは二重らせん構造を取っていますが、他の酵素によるタンパク質の転写や、染色体の複製時にはDNAの巻き戻し酵素であるヘリカーゼによって1本鎖に分解される必要があります。
しかし、二重らせん構造のDNAが曲げられて、その端が円状につなげられているものは、その部分的なつながりや絡まりによって、またトポアイソマーと呼ばれる位相体においても、DNA鎖の切断なしではそれぞれの核酸が1本鎖に分解されることができない状態になっています。
DNAトポイソメラーゼはDNAを一時的に切断することにより、絡まったりつながったりしているDNA核酸を一本鎖の状態に分解し、DNAの複製を触媒する作用と、複製後のDNAを再結合させる作用があります。
ニューキノロン系菌薬である塩酸シプロフロキサシンは、細菌のDNAジャイレースのサブユニットAに結合して、その活性を阻害します。
その結果DNAジャイレースの作用が抑制され、細菌のDNA鎖を分解や再結合を不可能にするため、DNAの複製、及び細胞分裂が阻害され、細菌が死滅することになります。