シラカール10は、血圧を下げる働きを持つ高血圧治療薬です。
高血圧症は、動脈の中膜にある血管平滑筋が収縮し、循環する血液量が増加する疾患です。正常血圧範囲「収縮期血圧130mmHg未満・拡張期血圧85mmHg未満」を超えて高く血圧が維持されている状態で、本態性高血圧(原発性高血圧)と二次性高血圧に分類することができます。
本態性高血圧は日本人の高血圧症の約90%を占めていますが、血圧上昇を引き起こす詳しい原因はわかっていません。
しかし一般的には塩分の過剰摂取、ストレス、喫煙などや遺伝が大きく関わっていると考えられています。
また二次性高血圧の場合は、ほとんどが腎不全、腎炎など腎臓の病気が影響して生じることが多いため、元となる病気を治癒することで完治する確率が高いようです。
高血圧を引き起こす原因のひとつにカルシウムがあります。
カルシウムには筋肉の収縮をコントロールする作用があるため、血管壁にある平滑筋細胞に入り込むと血管が収縮し、血圧が上がります。
この働きを抑制するのが、高血圧の治療薬のひとつであるカルシウム拮抗薬と呼ばれる薬です。
従来のカルシウム拮抗薬は、この血管平滑筋の働きを阻害することで血管拡張作用を示すL型(血管平滑筋)Ca(カルシウム)チャンネル・ブロック型が中心とされてきました。
Caチャンネルとは、細胞の内と外のカルシウムイオン濃度を調節するための、カルシウムが出入りする細胞膜上の扉のようなものです。
血管は平滑筋という筋肉で包まれているため、このCaチャンネルが開いてカルシウムイオンが筋肉組織の細胞内に入りこむと、筋肉の収縮作用が起こり、血管も収縮するというわけです。
シラカール10の有効成分であるシルニジピンは、このL型Caチャンネルを遮断するだけでなく、N型Caチャンネルを遮断する作用も持ち合わせています。
心臓の活動や血管の収縮などは、自律神経が支配していますが、自律神経は交感神経と副交感神経からなり、それぞれが興奮的、抑制的な相反する作用をしています。
例えば交感神経は心拍数を速くし、心臓や血管を収縮し、副交感神経はその逆の働きをします。
N型とは、交感神経終末でみられるCaチャンネルで、伝達物質の放出に関わっています。
このうち伝達物質のひとつであるノルアドレナリンには、受容体と結びつくことで血管を収縮させたり、心収縮力や心拍数を増加、腎血流を低下させる働きがあり、この働きを阻害することで血管拡張に伴う交感神経活性亢進(心拍数の増加、ストレス性の昇圧)などが抑制されます。
このふたつの働きにより、シルニジピンは高血圧治療に対する治療効果が高く、また安全性も高いために、一般的に高血圧治療の第一選択薬として使用されることが多いようです。
また血糖、尿酸、脂質などにも大きな影響を与えないほか、年齢を問わずに広く使用することができるため、合併症の多い高齢者でも安心して使用できるのが特長です。
このほかにもシラカール10は、尿たんぱくを減少させることによる腎保護効果のほか、長生き効果も期待されています。