シクロミューン点眼薬は免疫抑制薬のシクロスポリン(サイクロスポリン)を有効成分とする乾性角結膜炎(涙液減少症/ドライアイ)の治療薬です。
乾性角膜炎(涙液減少症/ドライアイ)とは目の表面を潤し目の乾燥を防いでいる涙の量やその質が低下し、目の表面に障害が発生することによる目の充血、疲れ、異物感などの不快感を生じる状態です。通常『ドライアイ』と呼ばれることの多い疾患ですが、単なる目の乾きや涙の質的異常ではなく、実際に目の乾燥によって目の表面になんらかの損傷が認められるのが特徴です。
目の表面は涙(涙液)と呼ばれる液体で覆われています。この涙(涙液)は目の外上側にある涙腺という組織から分泌される体液の一種で外側から油層、水層、そしてムチン層と呼ばれる3重の層によって構成されています。まばたきの度に網目状の薄い膜となり目の表面を覆うことで目の乾燥を防ぎ、目に酸素や栄養分を供給しているほか、異物の目への侵入を防いだり、目の汚れや細菌を洗い流す役割を果たしています。
ドライアイには涙(涙液)の量の異常によって引き起こされる涙欠乏性ドライアイと、涙(涙液)の質の異常により、涙(涙液)の蒸発が多くなる蒸発性ドライアイとに大別されています。
涙欠乏性ドライアイは加齢や抗ヒスタミン薬、向精神薬などの薬物の使用による涙(涙液)の分泌量の減少が主な原因としてあげられ、またシェーングレン症候群といった全身疾患の一つの症状として表れることもあります。
一方の蒸発性ドライアイは目、パソコン、テレビ、携帯画面などの凝視や細かい作業、運転といった作業によるまばたきの減少や、冷暖房の効いた乾燥した環境、コンタクトレンズ着装などによる目の表面の荒れなどにより、涙(涙液)の蒸発量が増加することによって引き起こされるものでドライアイと診断される症状の大半が該当するとされています。また過剰なストレスや夜型の生活などによる涙(涙液)やその蒸発を抑える油層の分泌の抑制なども蒸発性ドライアイの誘因とされています。
従来の乾性角膜炎(涙液減少症/ドライアイ)の治療は、人工涙液による点眼薬の使用が中心となっていました。ところが近年の研究により、乾性角膜炎(涙液減少症/ドライアイ)の発症や増悪に目表面の炎症の関与が認められたことから、最近では新しい乾性角膜炎(涙液減少症/ドライアイ)の治療薬の開発として目表面の抗炎症・免疫抑制作用を持つ治療薬の開発が活発になされています。
シクロミューン点眼薬はこの抗炎症・免疫抑制作用を持つ点眼薬としてアメリカで唯一承認されているレスタシスのジェネリックです。有効成分のシクロスポリン(サイクロスポリン)は白血球の一種であるT細胞が、免疫機能を活性化させるリンホカインという物質を産生することを阻害します。この作用により免疫反応を促進させるT細胞そのものや、抗体を生成するB細胞といった免疫細胞の作用を抑制し、炎症症状を減少させる効果を発揮します。
この免疫抑制作用により、涙(涙液)を目の表面に安定させる役割を果たしているムチン層や、涙(涙液)の蒸発を抑えている油層の分泌や質を悪くするとされている結膜炎、結膜上皮障害、マイボーム腺の炎症を抑え、涙(涙液)の分泌を促進する作用があると考えられており、結果として乾性角膜炎(涙液減少症/ドライアイ)の症状を緩和するとされています。しかし、その一方でシクロミューン点眼薬には抗炎症成分の配合された点眼薬を使用している人や、涙腺プラグを使用している人における涙(涙液)の分泌量を増やす作用は認められていません。